日韓世論調査 安保協力の理解は深まったが(2024年6月11日『読売新聞』-「社説」)

 日韓両国民の多くが、日米韓3か国の安全保障面での協力が必要だという認識を示した。心強い動きと言える。
[ 日韓両政府は、安保面をはじめ、具体的な協力分野を拡大し、良好な関係が両国民にとってプラスであることを示していく必要がある。
 読売新聞と韓国日報の共同世論調査で、日米韓が安保面で連携を強化することに「賛成」と答えた人は、日本で86%、韓国で79%とともに高かった。
 また、日韓が今後、協力を進めるべき分野として、日本で88%、韓国で72%の人が「外交・安全保障」を挙げた。韓国で7割を超えるのは異例のことだ。
 東アジアでは、北朝鮮がミサイル開発を加速させ、中国は強引な海洋進出をやめない。ウクライナを侵略したロシアは、中朝と軍事的な連携を深めている。
 こうした安保環境の悪化を背景に、韓国内で、米国との同盟だけでなく、同じ米国の同盟国である日本との協力は欠かせないとの認識が強まったのではないか。
 調査では、対日関係の改善を掲げた韓国の尹錫悦大統領が2022年に就任し、岸田首相と会談を重ねる中で、両国で相手国への国民感情が好転し、親近感を抱く人が増えていることも改めて浮き彫りとなった。
 日韓関係の現状を「良い」とする人は、日本で13年ぶりに50%に達し、韓国では42%と、2年連続で4割台となった。
 特に、相手国に親しみを感じる人の割合は、日韓ともに18~39歳の若年層で最も高かった。未来志向の関係の構築を目指す上で好材料と言える。
 気がかりなのは、尹氏の対日重視外交に水を差す動きが、韓国政界などでやまないことだ。
 4月の総選挙で単独過半数を確保した左派系の最大野党は、「尹氏は日本に譲歩しすぎだ」として見直しを迫っている。3年後の大統領選をにらみ、国民の間に残る反日感情を 煽あお る狙いだろう。
 元徴用工(旧朝鮮半島出身労働者)を巡る訴訟でも、日本企業に賠償を命じる判決が相次いでいる。韓国の裁判所に、日韓の歴史問題で反日的な判決を出す傾向があるのは憂慮せざるを得ない。
 こうした状況が続けば日本の対韓感情が再び悪化しかねない。
 対日関係を政争の具とすることは、日米韓の分断を狙う北朝鮮やロシア、中国を利するだけで、韓国の利益にならない。韓国野党の慎重な行動に期待したい。