改正民法成立 共同親権で子の最善図れ(2024年6月8日『産経新聞』-「主張」)

キャプチャ
改正民法などが可決、成立した参院本会議
 離婚後の親権を父母の双方に認める「共同親権」を盛り込んだ改正民法などが可決・成立した。令和8年までに施行される。
 これまで離婚後の親権は一方の親が持つこと(単独親権)になっていたが、父母が合意すれば共同親権を選べる。離婚後の親権が見直されるのは77年ぶりだ。
 子供の「最善の利益」を実現することが狙いである。単独親権では、親権を持たない親がわが子と面会すらできないケースがあり、それが子供の利益も損なっていると指摘されていた。法改正により、離婚後も父母の双方が子育ての務めを果たせるようにしたのは妥当だ。
 ただ、単独親権か共同親権かで父母が合意できない場合は家庭裁判所が判断する。その責任は重大だ。家裁は施行までに、的確に判断できる体制を整えてもらいたい。政府も家裁調査官らの増員など、必要な施策を講じるべきである。
 共同親権では、子供の進学先や医療行為などには父母の双方が関与するが、習い事など「日常の行為」や緊急手術など「急迫の事情」については同居の親が単独で決めることができるとした。しかし線引きはあいまいだ。政府は、単独で決められるケースを具体的に、分かりやすく示す必要がある。
 すでに離婚している場合でも、施行後に単独親権から共同親権への変更を家裁に申し立てることができる。家裁が扱う案件が急増することも予想され、準備を急がねばなるまい。
 懸念されるのは、虐待やドメスティックバイオレンス(DV)の恐れがあるケースだ。今回の法改正で、虐待やDVなどの恐れがあれば家裁は単独親権にしなければならないと定めたのは当然だろう。
 離婚後の養育費も大きな課題だ。共同親権でも単独親権でも最低限支払うべき金額を「法定養育費」として設定したことは評価できる。
 近年は国際結婚が破綻した際、日本人の親が子供を連れて帰国したり、外国人の親が母国に連れ去ったりするトラブルが相次いでいた。このため共同親権を認める法整備が海外からも求められていた。
 夫婦関係が終わっても、父母の双方が子供の幸せに努める。それを当たり前にする環境を整えたい。