マイナ保険証迫る「台本」に「強引との受け止めは残念」 武見厚労大臣、現行の保険証は「安心感のシンボル」と認めるが… 2024年6月4日『東京新聞』)

マイナ保険証の利用を迫るような政府の普及策に「強制だ」と反発が広がっている。
武見敬三厚生労働相は4日の記者会見で、病院や薬局の窓口で声かけする「台本」まで作って普及を進めていることについて、「強引に受け止められていたとすれば残念」と語った。「丁寧に普及に取り組む」としながらも、12月2日で現行の健康保険証を廃止する方針から「時期的な限度もある」と理解を求めた。(戎野文菜)
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この日の会見で、武見厚労相は反発が広がる政府の普及策について「マイナ保険証は、わが国の医療の進歩には不可欠な重要なパスポート」「ぜひ、このことを理解いただいて参加していただくことが私たちの基本的な趣旨であることを改めて申し上げたい」と述べた。
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記者の質問に答える武見敬三厚労相=4日、国会で
「アナログ的手法からデジタルに変わることが今、日本の社会全体に求められている」とマイナ保険証の利用を呼びかけた。
◆「心のバリア」に一定の共感
一方で、「私ぐらいの年代になると、(現行の)保険証があれば日本では医療機関にかかれるという安心感のシンボルのようなもの」と話し、「アナログからデジタルに変わるというのは、『心のバリア』みたいなものもある」と、マイナ保険証への移行に抵抗感のある人たちの心情にも一定の共感を示した。
厚労省は、病院や薬局を駆り立てて利用促進のキャンペーンを展開している。5月からは集中取り組み月間として、利用者が増えた病院や薬局に見返りとして最大20万円の支援金を支給。その条件として、窓口の声かけやチラシの配布、ポスターの掲示を求めている。
厚労省は、窓口での声かけを徹底するため「トークスクリプト」という台本を配付し、「マイナンバーカードをお持ちでしょうか」「次回来局時はぜひお持ちください」などとマイナ保険証の利用を促している。
◆「強制だ」と批判の普及策は継続
政府の普及策には、病院や薬局を訪れた人たちから「マイナ保険証を作れと強制されているよう」「12月からはマイナ保険証がないと受診できないのか」といった戸惑いの声が広がっている。
武見厚労相は会見で、「一人でも多くの方にマイナ保険証を利用していただくように引き続き、利用促進のため全力で取り組んでいく」とし、取り組みを継続する考えを示した。
マイナ保険証をもっていない人はどうする? 12月2日に現行の健康保険証が廃止されても、すでに発行されている現行保険証は最大1年は今まで通りに利用できる。マイナ保険証を持たない人には、現行保険証と同じように使える「資格確認書」が新たに発行される。当分の間は申請をしなくても届く。有効期間は5年以内で保険者が設定し、更新も可能。
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厚労省が作った「台本」の一部】
薬局の窓口でマイナ保険証の利用を勧めるため、厚労省が作った声かけの「台本」
▽最初のお声がけ⇒「マイナンバーカードをお持ちでしょうか?」
▽カードを持参していなければ ⇒「マイナンバーカードを保険証として利用いただけます。次回来局時はぜひお持ちください」
▽カードを作成していなければ ⇒「2024年12月2日に現行の健康保険証の発行が終了します。まずはぜひ、お早めにマイナンバーカードの作成をお願いします」
※12月2日以降、マイナ保険証がなくても、有効期限までは現行の保険証が使えることや、「資格確認書」があれば受診できるとの説明はない