皇族の減少で未来の皇室はどうなる? 国民の象徴とは…【風をよむ】サンデーモーニング(2024年6月2日『TBS NEWS』)

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注目を集めた秋篠宮家の次女・佳子さまのギリシャ訪問。未来の皇室のあり方をめぐっては、いま課題も指摘されています。
■現地でも大人気 佳子さまがギリシャ訪問
ギリシャを公式訪問した秋篠宮家の次女・佳子さま。居合わせた観光客に手を振ると、歓声が上がりました。
地元メディアも連日報道。「ギリシャ人が佳子さまを愛する理由」という
コラムや、「自然な気品と美しさが脚光を浴びている」という指摘も。
そして、ギリシャ初の女性大統領・サケラロプル大統領、さらに首相夫妻とも懇談。
また支援施設では、ギリシャ手話で交流。パルテノン神殿には、ギリシャ国旗と同じ、青と白の装いで、遺跡の修復状況を視察されました。
3回目となる外国公式訪問を終えた佳子さま。しかし、こうした皇室の活動に関わる問題が今、進行しています。それは「皇族の減少」です。
■皇族の減少で未来の皇室は…
4月の園遊会の映像を見ても、天皇陛下秋篠宮さま以外は、女性ばかり。女性皇族は、結婚されると皇室を離れるため、今後、公務の担い手が不足することなどが懸念されます。
そこで、5月から国会で始まったのが、衆参の議長や、与野党代表者が出席する皇室の課題に関する全体会議。
皇族数の確保に向けて、女性皇族が結婚後も皇室に残る案などが議論されましたが、意見の隔たりもあり、今国会でのとりまとめは困難に。
また今回、正面から議論されていない課題…それが皇位継承を巡る問題です。2005年、愛子さまの誕生を受け、小泉政権の時に、「女性・女系天皇」を容認する報告書がまとめられましたが、具体的な動きは進んでいません。
現在、皇位継承資格をもち、次世代を担う男子は、秋篠宮家の長男・悠仁さまだけとなっています。皇室問題を研究する歴史学者の河西教授は…
河西秀哉 准教授(名古屋大学大学院・歴史学):
「現在の議論は『公務を担ってもらう人を増やす形』になっていて『安定的な皇位継承』という問題については、基本的に議論されていない。結局、先送りになっている」
■イギリス王室では変化が…
継承問題など、制度を巡って変化を経てきたのが、日本の皇室と同様、長い歴史を誇るイギリス王室です。
これまでも女性が王位に就くことはできましたが、2013年、約300年ぶりに法律を改正。王位継承を男子優先から、男女に関わらず第一子を優先する形に移行しました。スウェーデンデンマークなども同様の変更を行っています。
こうした制度変更が進んだ背景には、国民の理解があったと王室事情に詳しい君塚教授は語ります。
君塚直隆 教授(関東学院大学・英国政治外交史):
「国民あっての王室ですから、国民の支持、支えなくして王室の維持はあり得ない。それがあったから、(制度が)変わった訳なんです。特にイギリスの場合は、色々、広報を展開して、国民も王室のことをを分かってくれて、支えてくれるようになった」
国民にとって身近で開かれた王室を目指したイギリス。2022年に亡くなったエリザベス女王は、積極的に王室の活動を国民にアピールしていました。現国王も、絶えず投稿を行っています。
■日本の皇室もSNSをスタート
春の園遊会で振る舞われた料理やお菓子、そして、栃木県にある御料牧場の動物たちの画像や映像。
宮内庁は4月から、SNS「インスタグラム」に公式アカウントを開設し、皇族の活動や、関連する情報の配信を開始。フォロワーは既に141万に達しています。こうした取り組みについて、街の声は…
女性:
「開かれて活動なさってるのが見えてればいい」
男性:
「変化は感じます。オープンになった気がします」
■時代を経る中で変化する天皇
神話の時代からの長い伝統を持つとされる日本の皇室。明治維新後、旧憲法で、国は「万世一系天皇が統治する」とされ、天皇は「国の元首」に定められました。
ところが、終戦でその立場は大きく変わります。いわゆる「人間宣言」を行い、新憲法のもと、天皇は「国民統合の象徴」 となったのです。
天皇(現・上皇さま・1990年12月):
「日本国民統合の象徴として、現代にふさわしく、天皇の務めを果たしていきたいと思います」
戦地の慰霊や、被災地の訪問など、常に国民に寄り添う姿勢を見せてきた皇室。これからのありようについて専門家は…
河西秀哉 准教授(名古屋大学大学院・歴史学):
「象徴というのは憲法の中に『国民の総意に基づく』と書いてある。非常に概念は曖昧なんですけれども、時代の要請とか、国民の期待とか、複雑に絡み合いながら、社会が規定してきたもの。象徴としての姿は、我々主権者が、きちんと考えて議論していかなきゃいけない」
(「サンデーモーニング」2024年6月2日放送より)