自民・稲田朋美氏、党支部への寄付で税優遇か 「事務所使用料」還流(2024年5月28日『毎日新聞』)

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 自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件で、安倍派からキックバック(還流)を受けていた稲田朋美幹事長代理(衆院福井1区)が2020~22年、計202万円を自らが代表を務める党支部に寄付し、所得税の一部を控除される税優遇を受けた疑いがあることが判明した。支部は同じ時期、「事務所使用料」として稲田氏に計594万円を支出しており、稲田氏側に還流した形だ。
 自民党の調査で、稲田氏は21、22年に派閥からの還流分など計196万円が収支報告書に不記載だったことが分かっている。
 毎日新聞は稲田氏に対し、実際に控除を受けたかや、派閥からの還流分が寄付の原資になったかを尋ねたが回答はなかった。
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稲田朋美自民党幹事長代理の寄付金控除に関する資料=2024年5月27日午前11時5分、藤田剛撮影
 租税特別措置法では、個人が政党や政党支部などに寄付した場合、寄付額の約3割が税額控除されるか、課税対象の所得総額から寄付分が差し引かれる。
 福井県選挙管理委員会毎日新聞に開示した「寄付金(税額)控除のための書類」によると、稲田氏側は20年に22万円▽21年に90万円▽22年に90万円分――を控除対象として記載していた。
 一方、稲田氏が代表を務める「自民党福井県第1選挙区支部」の政治資金収支報告書によると、同支部は20~22年に稲田氏に毎月16万5000円(計594万円)を事務所使用料として支出。22年分については、年末に「事務所使用料の返還」として198万円が稲田氏から返還された旨を記載していた。
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稲田朋美氏の政治資金を巡る構図(2020~22年)
 政治家が自ら代表を務める政党支部に寄付して控除を受けた上、支部から政治家本人や後援会などに支出されるケースは過去にも問題視されてきた。
 毎日新聞がこの点を適切と考えるか尋ねたところ、稲田氏側は同支部名で「当該寄付は当支部が現住所に移転することを契機として、稲田朋美との間の契約・覚書に基づき、なされたもの。ただし、その後、契約・覚書の変更があったことから、過去の使用料分の返還を受けるとともに、過去の寄付金分を返還した」と書面で回答した。
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稲田氏が政党支部に寄付して税控除対象になった額
 派閥からの還流分などを巡り、稲田氏は24年2月、自身の資金管理団体「ともみ組」の収支報告書を訂正。21、22年に安倍派(清和政策研究会)からの寄付として計82万円、派閥パーティーの「会費預かり金」として計114万円を収入に計上した。【田中裕之】
 
「恥ずかしくないのか」裏金受けていた自民・稲田朋美氏に「税控除」発覚で猛批判、12年前の発言が“ブーメラン”に(2024年5月28日『SmartFLASH』)
 
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2017年、本誌の直撃を受ける稲田氏。このときは缶ビールや「ほたてひも」まで領収書を取っていたことに批判を受けていた
 自民党による一連の政治資金パーティー裏金事件に関連し、同党の稲田朋美幹事長代理が、猛批判の矢面に立っている。5月28日の毎日新聞によると、稲田氏は3年間で計202万円を、自らが代表を務める「自民党福井県第1選挙区支部」に寄付。これによって所得税の一部が控除され、税制優遇を受けたとされる。
 
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レアすぎる!稲田大臣のゴスロリ姿
「稲田氏は2024年2月、旧安倍派からの還流(キックバック)など、計196万円の不記載があったとして、政治資金収支報告書を訂正しています。今回の“疑惑”については、文書で税控除を認めたものの、派閥からキックバックされた、いわゆる“裏金”が寄付の原資ではないと説明。『控除は法令に則っている』としています。
 しかし、個人がおこなった寄付は寄付金控除が適用されますが、政治家が政党支部に寄付して控除を受けることは以前から問題視されており、『実質的な脱税ではないか』という声もあります」(政治担当記者)
 27日には、自民党安倍派の菅家(かんけ)一郎衆議院議員が、派閥からのキックバック分を自らの政党支部に寄付し、同じく税制優遇の恩恵を受けていたことも明らかになっている。たび重なる自民党議員の“税金逃れ”に、国民からは非難の嵐が巻き起こっている。Yahoo!ニュースのコメントには、以下のような怒りの声が寄せられた。
《これだけの裏金脱税議員が居て、1人として「納税すべきだった」と申し出る人間が居ない。それどころか更に税優遇を勝ち取ろうとするなど、制度とはいえ恥ずかしくないのだろうかと思ってしまう》
《本来は収入として記載すべきお金を隠して、それを原資にして税優遇を受けると言うスキームはマネーロンダリングと呼ぶべきものだろう》
《党本部はだんまりを決め込んでいる。要するに暗黙の了解=みんなやっていると言うことだね。国民からは1円でも多く税金を吸い上げ、自分達は脱法行為で私腹を肥やすなど、図々しいにも程があるだろう》
 渦中の稲田氏だが、12年前に発したこんな発言も掘り起こされている。
「政治を信頼できないのは、国民のみなさんの考え方なんです。政治不信の根底には、国民のモラルの低下があるのではないかと思っております」
 これは2012年4月16日、ホテルニューオータニで開催された政治資金パーティーにて、意気軒高に熱弁をふるっていた稲田氏による発言である。民主党政権だった当時、同党が掲げたキャッチフレーズ「国民の生活が第一」を批判し、日本人全体のモラル向上を訴えた演説で、彼女はこう続けた。
「目の前の利益誘導に飛びつくような国民を育てる教育をしてきたのは、我が自民党じゃないでしょうか! 私はそのことを反省しなければならない!」
 この“モラル”発言に対し、Xでは以下のように皮肉る声が――。
《は?お宅の裏金寄付も国民のせいか?》
《「稲田朋美のモラルの低下」の間違いですね。というかもともと低下するようなモラルなんかないだろ》
《モラルのド低下はあなたも含め政治家たちだろーがー!》
 特大の“ブーメラン”が突き刺さった形の稲田氏。今度こそ“反省”して、政治不信をただしてほしいものだ。