先島諸島避難計画 沖縄県は政府に協力せよ(2024年5月27日『産経新聞』-「主張」)

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尖閣諸島魚釣島沖で中国海警船(中央奥)をマークする海上保安庁の巡視船
 台湾有事や尖閣諸島沖縄県石垣市)への軍事侵攻を念頭に、沖縄・先島諸島の住民らを全員避難させる計画づくりが進んでいる。いわゆる非戦闘員退避活動(NEO)だ。政府は内閣官房に検討班を設け、令和6年度内に全員避難の初期計画を策定する方針だ。
 先の大戦末期、沖縄の地上戦で多数の県民が犠牲になった。有事を招かないよう外交で最大限努力するのは当然だが、中国の強硬姿勢は改まらない。万一の事態に備える必要がある。
 NEOは国民を守る上で欠かせない活動で、政府と自治体は真剣に備える責務がある。
 政府は、外国の武力攻撃が予測されれば、台湾に近い先島諸島石垣市宮古島市与那国町など5市町村の全住民約11万人と観光客約1万人を、沖縄県外の九州各県と山口県に避難させることにしている。
 住民らの輸送には民間の航空機と船舶を用いるが、沖縄県の試算では完了までに最短でも6日程度かかる。空港施設などのインフラ整備が欠かせない。
 悪天候が重なれば何日も足止めされる恐れもある。政府は先島諸島に2週間程度滞在できる地下式のシェルター(避難施設、防空壕(ごう))も整備する。
 先島諸島から避難する人々を受け入れる九州・山口の自治体も、宿泊施設の確保や食料の備蓄、医療体制の整備、避難が長期化する場合の生活支援策などを整えておく必要がある。
 沖縄本島でのシェルター整備や台湾からのNEOにも備えなければならない。有事が切迫すれば、台湾で暮らす邦人や外国人、それから観光客が大挙して日本に避難してくる。先島諸島と台湾の各NEOは同時並行となる可能性が高い。
 懸念されるのは沖縄県の動きが鈍いことだ。玉城デニー知事を支える県内左派勢力は、戦争の危機を煽(あお)るとして避難計画などに反対している。
 県民の命を顧みない倒錯した発想である。ロシアによる侵略から逃れるためウクライナ東部から多くの同国民が退避した。これもNEOで、日本に避難してきた人々もいる。彼らや彼らを逃したウクライナ当局が戦争を煽ったというのか。そんなことはあるまい。
玉城氏と県は、県民らの命を守るため、政府に積極的に協力してもらいたい。