投票環境の維持 有権者の権利を損なわぬよう(2024年5月27日『読売新聞』-「社説」)

 選挙は民主主義の根幹だ。国や自治体は、人口が減る地域でも投票所を維持し、有権者が投票しやすい環境を守る努力を尽くしてほしい。
 地方を中心に、選挙の際の投票所減少への対応が課題となっている。国政選挙では2001年参院選で5万3439か所あった投票所は、22年参院選では4万6016か所に減った。
 主な要因は地域社会の衰退だ。人口減少地域では近年、自治体合併や学校の統廃合が進んだ。
 地域を支える自治会なども加入者が減り、高齢化している。公職選挙法が投票所ごとに最低2人選ぶよう定める「投票立会人」を確保できない地域が増えている。
 立会人は、投票が公正に行われているか確認する役割を担うが拘束時間が長く負担が大きい。
 また、投票所が遠くなり、投票しづらい人が増えたことも投票率低下の一因と指摘される。立会人不足による投票所の統廃合と重なって、有権者の投票機会が奪われる事態は避けねばならない。
 総務省は19年、投票所のある地区に住む人という条件をなくし、有権者なら誰でも立会人になれるよう公選法を改正した。
 鳥取県は、さらに立会人を確保しやすくするため、選挙の監視をオンラインで行う仕組みの導入を目指している。6月に行われる予定の智頭町長選と町議補選から実施することを検討している。
 具体的には立会人の1人は投票所に配置し、もう1人は役場のモニターなどで見守ることを想定している。遠方の投票所に足を運ぶ負担を減らすのが狙いだ。
 総務省も「少なくとも1人は投票所内で立ち会う」ことなどを条件に、鳥取県の提案を認めた。
 立会人のなり手を増やし、投票所を維持しようという狙いは理解できる。通信障害が起きた時の対応などで混乱しないよう、入念に準備することが重要だ。
 効果を見極め、他の自治体にも広げる可能性を探りたい。
 03年に導入された期日前投票は、22年参院選有権者の2割近い約1961万人が利用した。一層の定着を図るべきだ。
 投票所が廃止された地域への移動投票車の派遣や、投票所への送迎に乗り出す例もある。
 指定された投票所に限らず、その自治体の有権者なら誰でも利用できる「共通投票所」を商業施設などに設ける例も増えてきた。
 自治体は国とも連携し、地域の実情に応じた有効な対策について工夫を重ねることが大切だ。