大の里、最速幕内優勝 パブリックビューイングでも祝福の声(2024年5月26日『毎日新聞』)

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優勝して鯛を掲げる大の里(中央)。右は二所ノ関親方、左は父の中村知幸さん=茨城県つくば市で2024年5月26日午後8時25分、宮武祐希撮影
 大相撲夏場所千秋楽の26日、茨城県阿見町二所ノ関部屋に所属する小結・大の里(23)=石川県出身=が初優勝し、同町の本郷ふれあいセンターのロビーで行われたパブリックビューイング(PV)では集まった約120人の町民らが歓喜の声を上げた。
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優勝した大の里に大きな歓声と拍手を送る阿見町民ら=阿見町で2024年5月26日(阿見町提供)
 開場予定の1時間前の午後3時ごろには早くも10人ほどが並び、当初50脚の予定だった椅子席は80脚まで増やされたが、それでも立ち見が出るほどの盛況に。大型スクリーンを固唾(かたず)をのんで見守り、その瞬間、大歓声と大きな拍手が湧いた。用意されたくす玉が割られて「祝優勝 大の里」と書かれた垂れ幕が現れると盛り上がりは最高潮に。会場の設営にあたった町の職員は「みんなが笑顔になれて本当に良かった」と興奮気味に話した。
 大井川和彦知事は「二所ノ関部屋所属の大の里関が優勝を飾られたことは多くの県民に大きな誇りと喜びをもたらしてくれる。今後ますます活躍されることを強く期待します」との祝福コメントを出した。【松下英志】

新小結・大の里「史上最速」優勝 初土俵から7場所 大相撲夏場所(2024年5月26日『毎日新聞』)
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阿炎(右)を押し出しで破り、安堵の表情を浮かべる大の里=両国国技館で2024年5月26日、幾島健太郎撮影
 大相撲夏場所千秋楽は26日、東京・両国国技館であり、新小結・大の里(23)=本名・中村泰輝(だいき)=が12勝3敗で初優勝を果たした。初土俵から所要7場所での幕内優勝は幕下付け出しでは1972年夏場所の輪島の15場所を抜き、先場所の尊富士の10場所も更新する最速記録。また、新三役優勝は57年夏場所を小結で制した安念山以来で67年ぶりで昭和以降2人目。元横綱稀勢の里二所ノ関親方の弟子では初の幕内優勝者となった。
 石川県出身の大の里は新潟・海洋高を経て日体大に進学。1年生だった2019年の全国学生選手権を制して学生横綱、21、22年の全日本選手権を連覇してアマチュア横綱にもなった。国体でも成年の部個人で2度の優勝を飾り、幕下10枚目格付け出しで23年夏場所初土俵。今年1月の初場所に新入幕すると、2場所連続で11勝を挙げ、昭和以降2位の早さとなる初土俵から所要6場所で小結に昇進した。【岩壁峻】

大の里 涙、涙の史上最速初優勝!入門1年、初土俵から7場所で輪島超え快挙 2場所連続ちょんまげV(2024年5月26日『毎日新聞』)
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夏場所千秋楽>阿炎(左)を押し出し、優勝を決め天を仰ぐ大の里(撮影・久冨木 修) 
 大相撲夏場所は26日、東京・両国国技館で千秋楽の取組が行われ、新小結・大の里(23=二所ノ関部屋)が関脇・阿炎(30=錣山部屋)に勝って12勝3敗で初優勝を決めた。初土俵から所要7場所で、幕下付け出しでは横綱・輪島の15場所を更新する史上最速優勝。新小結での優勝は1957年夏場所の安念山以来67年ぶりとなった。春場所の尊富士(25=伊勢ケ浜部屋)に続いて2場所連続の“ちょんまげ優勝”で、23歳の大器が横綱大関陣に休場が相次いだ大混戦の場所を制した。
 勝てば入門1年での歴史的優勝。大歓声の中、土俵に上がった大の里は、阿炎に立ち合い勝ちすると、一気に圧力を強め押し出した。その瞬間、会場で祈るように息子の大一番を見守った父はガッツポーズ。そして歓喜の涙を流した。
 大の里は、目が潤んでいるように見えたが、天を見つめひと息。勝ち名乗りを受け土俵を下り腰を下ろした瞬間、涙がこぼれ落ちた。大歓声がと拍手が鳴りやまない中、何度も涙を拭った23歳。2場所連続で優勝争いに絡みながらも涙をのんでいたが、“3度目の正直”でついに賜杯を手にした。
 所要6場所のスピードで新三役に昇進した大の里は今場所、初日に横綱照ノ富士から初勝利を挙げると、6日目には過去2戦2敗の大関琴桜に寄り切りで勝利。1横綱2大関1関脇を撃破し、7日目で優勝争いトップに並んだ。11日目には大関・豊昇龍に3場所連続下手投げで敗れて後退したが、12日目から宝富士、宇良、湘南乃海と難敵を下し、単独トップで千秋楽を迎えていた。
 新入幕の初場所は 9日目を終えて1敗で首位に立つも、10日目からの上位戦に3連敗を喫して優勝戦線から脱落。春場所は14日目を終えて1差に迫り逆転優勝の可能性もあったが、尊富士に13勝2敗で逃げ切られた。

「憎たらしいほど強くなって」 大の里の父知幸さん、最速優勝に涙(2024年5月26日『毎日新聞』)
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大の里が初優勝し涙ぐむ父の中村知幸さん(中央)=両国国技館で2024年5月26日、宮間俊樹撮影
 大相撲夏場所(東京・両国国技館)千秋楽が26日行われ、新小結・大の里(23)=本名・中村泰輝=が初の幕内優勝を果たした。2023年夏場所から所要7場所での「最速優勝」の快挙に、千秋楽を国技館で観戦した父知幸さん(48)は涙を見せ、喜びをかみ締めた。
 大の里は石川県津幡町出身。地元から駆けつけ、勝てば優勝が決まる阿炎との大一番を見届けた知幸さんは「入門して1年足らず。夢にも思わなかった」。千秋楽の協会あいさつで、役力士として土俵に立つ息子の姿も目に焼き付けた。
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初優勝し賜杯八角理事長(右)から受け取る大の里=両国国技館で2024年5月26日、宮間俊樹撮影
 大の里は11勝を挙げた3月の春場所も終盤まで優勝争いを演じ、早くも存在感を高めている。知幸さんは息子のハイスピードの成長に目を細めつつも、緊張感ある取組が続くことに「楽しく相撲を見られないんですよ、本当に……」と苦笑いも浮かべる。
 知幸さんの前では「ぺちゃくちゃしゃべるのではなく、必要なときに一言、二言話すタイプ」という大の里。小学1年で始めた相撲に関しては、気持ちの強さを発揮していたという。「小学生も高学年になると成長に差が出て、体の大きい相手に負けると『もうダメだな』と思ってしまいがち。だけど、彼はやられたら、その倍、やり返そうとしていた」と振り返る。
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新潟県立海洋高時代に地域の催しに参加する大の里(右)=田海哲也さん提供
 小学校卒業後は、街ぐるみで相撲を盛り上げる新潟県糸魚川市への「相撲留学」に送り出した。快挙を果たしても、知幸さんはさらなる飛躍に思いをはせる。「(元横綱の)北の湖さんのように、『憎たらしいほど強い』と呼ばれる力士になってくれれば」と期待を寄せた。【岩壁峻】