繰り返される米兵の性的暴行事件に怒りの声 「国が基地を押し付けたせい」「隠蔽許さない」外務省前でデモ(2024年7月3日『東京新聞』)

 
 在沖縄米兵による性的暴行事件が次々と明らかになる中、東京・外務省前で2日夕、女性たちが「隠蔽(いんぺい)を許さない」と抗議の声を上げた。首都圏でも広がった抗議のうねり。情報を共有しなければ、問題解決にはつながらないのではないか。繰り返される沖縄の事件を止めるため、連帯しようとする参加者たちの思いを聞いた。(曽田晋太郎、安藤恭子

◆少女を車で誘拐し…昨年から5件公表されず

 「国が基地を押し付けたせいで起きた性暴力を隠すな」「沖縄でこんなに性被害があることはあり得ない。日米地位協定を見直さないといけない」。首都圏の女性団体などが企画した外務省前での抗議行動には100人以上が参加し、声を上げた。
外務省前で米兵の暴行事件について抗議活動をする人たち=2日、東京・霞が関で(平野皓士朗撮影)

外務省前で米兵の暴行事件について抗議活動をする人たち=2日、東京・霞が関で(平野皓士朗撮影)

 抗議行動では、米兵らによる性暴力が繰り返される状況を許してきた日米両政府に強く抗議し、「あらゆる性暴力を許さず、基地押し付けと闘う沖縄の人たちと連帯します」との声明を発した。
 事件を巡っては6月25日、昨年12月に16歳未満の少女を車で誘拐し、自宅に連れ込み同意なくわいせつな行為をしたとして、那覇地検が不同意性交罪などで在沖縄米空軍兵長を起訴していたことが判明。
 その3日後には、沖縄県警が5月、女性への不同意性交致傷の疑いで別の在沖縄米海兵隊員を逮捕、起訴されたことも明らかになった。いずれの事件も「プライバシー保護」などを理由に公表されず、県側にも伝わっていなかった。
 今月1日の県議会では、この2件と合わせ報道発表されていない性的暴行事件が昨年以降計5件あったことも分かった。

◆「沖縄だけの問題ではない」首都圏からも声を

 外務省前の抗議行動を企画した1人で「アジア女性資料センター」の本山央子代表理事は「これまでずっと女性への性暴力事件が表に出ず、不可視化されている構造を問うため企画した。決して沖縄だけの問題ではなく、本土側がつくっている問題。首都圏でも沖縄と連帯し声を上げる必要がある」と意図を語る。
外務省前で米兵の性的暴行事件について抗議するアジア女性資料センターの本山央子代表理事=2日、東京・霞が関で(平野皓士朗撮影)

外務省前で米兵の性的暴行事件について抗議するアジア女性資料センターの本山央子代表理事=2日、東京・霞が関で(平野皓士朗撮影)

 日米両政府への抗議会見を開いた沖縄の政治団体「沖縄うない」副代表の玉那覇淑子・北谷町議は「昨年12月の事件発生から半年も公表されず、その間に別の事件が起きた。情報がきちんと共有されパトロール強化されていれば、新たな性暴力は防げたかもしれない」と憤る。
 昨年12月には政府が設計変更を申請した名護市の辺野古新基地の軟弱地盤改良工事の代執行が行われ、今年6月には県議選もあった。「米軍への抗議を広げまいとする、日米の政治的な思惑で人権がないがしろにされたのではないか。他の地域でも起きうる問題。首都圏でも抗議の声が上がっていると知って勇気づけられる」と玉那覇さんは受け止めた。
 外務省前での抗議行動にも参加した千葉商科大の坂本洋子非常勤講師(ジェンダー論)は「これまで沖縄で女性への性暴力事件があるたび、日本政府は綱紀粛正や再発防止を掲げてきたが、事件は後を絶たない。政府が本当に事件を深刻に受け止めているのか疑問で、女性たちの被害を軽視していると言わざるを得ない」と指摘。「(日本側の捜査権を制限する)日米地位協定や基地があるがゆえに問題解決につながらない。地位協定の抜本的な見直しや将来的な沖縄の基地解消を進めないと、事件はなくならない」と強調した。