弁護士運営サイトで偽広告か…損害金回収サービス、利用ないのに無断で写真やコメント掲載(2024年5月25日『読売新聞』)


 大阪弁護士会の弁護士が運営責任者と明示されたサイトで、店の予約キャンセルに関する損害金回収サービスについて、実際は利用していないのに利用したとする人の写真やコメントが無断で掲載されていたことがわかった。サイト上で「利用者の声」として紹介された人物とみられる居酒屋とカルチャー教室の関係者が取材に対し、回収サービスの利用を否定した。虚偽の内容を含む広告だった可能性がある。(浅野榛菜、林信登)

【写真】著名人も偽広告への注意を呼びかける

 弁護士は川口正輝氏(38)。広告会社に弁護士名義を貸し、ロマンス詐欺の被害者から依頼された被害金の回収を行わせていた弁護士法違反(非弁提携)の疑いがあるとして、同会は昨年12月、川口弁護士の懲戒請求を公表した。大阪地検特捜部は2月、大阪市北区にある川口弁護士の事務所などを同容疑で捜索し、捜査を続けている。

 予約キャンセルに関するサイトの名称は「ドタキャンガードマン」。川口弁護士が写真とともに運営責任者と紹介され、飲食店やホテル、カルチャー教室などを対象に、客のキャンセルに伴う損害金の回収を代行するとうたっていた。回収の成功事例や利用者の声を掲載し、「もう泣き寝入りする必要はありません」とサービスをPRしていた。

 この中で、サービスを利用した居酒屋関係者の声として、「店に安心感が生まれ、お客様にも安定したサービスを提供できるようになりました。本当に頼りになるパートナーです」との記述があり、店関係者と店内の様子が写った写真も紹介されていた。

 しかし、読売新聞が調べたところ、この写真は九州の地域ニュースサイトがインターネット上で2021年7月に居酒屋の開店を取り上げた際のものと酷似していた。取材に対し、地域ニュースの担当者は「自分が撮影した写真と同一だろう。利用について断りはなかった」と話し、居酒屋の男性代表も「回収代行サービスを利用したことはなく、サイトの存在も知らなかった」と答えた。

 また、回収代行サービスのサイトに別の「利用者」として写真が掲載された大阪府内のヨガ教室講師は「サービスは使っていない。教室のホームページに載せていた写真と同じで驚いている」と語った。

 デジタルデータの解析技術を研究する上原哲太郎・立命館大教授に読売新聞が調査を依頼した結果、同教授はサイト上の写真画像と、居酒屋やヨガ教室の元画像について「同一のものとみて間違いない」と指摘した。

 こうした行為は、利用者を誤認させる表示をして業務を提供する行為を禁じた不正競争防止法にふれる可能性がある。

 川口弁護士の事務所関係者は「取材は受けない」としている。

 川口弁護士の懲戒請求公表後、サイト上の運営責任者は、別の弁護士になり、相談を受け付ける電話番号も変更された。サイトのレイアウトやサービスの内容はほとんど同じで、居酒屋関係者の体験談もそのまま使われていた。

 後任の男性弁護士は取材に、「『無断キャンセルで困っている人がいる』と知人から声をかけられ、(サービスに)携わろうと思った」と説明。「サイトの運営には関わっておらず、内容は知らなかった。前任者のことも聞いていない」とし、川口弁護士とは面識がないと強調した。

 取材後、サイトはメンテナンス中となっている。

 

ロマンス詐欺救済うたい名義貸しか 大阪地検特捜部、弁護士の所属先事務所を捜索(2024年2月28日『産経新聞』)

大阪地検

恋愛感情を抱かせ金銭をだまし取るロマンス詐欺の被害金回収をうたい、広告会社に弁護士の名義を使わせた疑いがあるとして、大阪地検特捜部が、弁護士法違反容疑で川口正輝弁護士(38)=大阪弁護士会=の所属する大阪市北区天神橋の「G&C債権回収法律事務所」を捜索していたことが28日、関係者への取材で分かった。押収した資料を解析し、立件の可否を検討するとみられる。

川口弁護士について、大阪弁護士会は昨年12月、同法違反の疑いがあるとして同年10月に懲戒請求を行ったことを公表。弁護士会によると、令和4年8月以降、被害金の回収を名目に1800人以上から計9億円超の着手金を受け取ったと推計されるが、回収が確認できたのは10人程度だった。

弁護士会によると、川口弁護士は詐欺の被害金回収などを請け負う専用サイトを開設。電話やLINE(ライン)で相談を募っていたが、実際の対応は法律事務を行う資格のない業務委託先の広告会社関係者に任せていた。回収が難しいケースでも、高額の回収が可能との誤解が生じかねない宣伝もしていたという。

ロマンス詐欺を巡っては、実績を誇張した弁護士事務所の広告がネット上に多数掲載され、各地の弁護士会が注意を呼びかける事態となっている。