政治資金規正法 自民党が譲歩すべきだ(2024年5月24日『東京新聞』-「社説」)

 自民党派閥の裏金事件を受けた政治資金規正法改正案の審議が、衆院政治改革特別委員会で始まった。与野党双方が提出した改正案の内容は隔たりが大きいが、今国会で法改正を実現するには、政治不信を招いた張本人である自民党が譲歩すべきは当然だ。
 審議されるのは、自民、立憲民主・国民民主、日本維新の会の各党がそれぞれ提出した計5法案。自民党案は政策活動費と企業・団体献金をともに温存する内容で、野党案は廃止や見直しを唱える。
 政策活動費について、自民党案提出者の鈴木馨祐氏は23日の特別委で「公開になじまないものが存在する」と公開対象を50万円超の支出項目のみとする妥当性を訴えた。党総裁の岸田文雄首相も22日の参院予算委で、使途明細をすべて公表すると「さまざまな不都合が生じる」と述べた。
 これに対し、与党公明党の幹事長だった斉藤鉄夫国土交通相は当時、党から政策活動費を受け取っていなかったが「活動に支障を感じたことはない」と言明した。
 立民も現在、政策活動費の支出を停止しており、自民党だけが不透明な資金を必要とする合理的な理由は見当たらない。
 財界との癒着の元凶とされる企業・団体献金政治資金パーティーについて、自民党は「政治資金を広く薄く集める努力が大事だ」(鈴木氏)と維持を主張する。
 大型疑獄事件の反省から、無理な資金集めをしなくて済むよう、企業・団体献金の廃止と引き換えに導入されたのが、国民の税金を原資とする政党交付金だ。
 しかし、こうした「平成の政治改革」から30年経た今も、政党と政党支部への企業・団体献金は残り、パーティーが企業・団体による政治家個人や政治団体への寄付の「抜け道」になっている。
 立民や維新、共産は特別委で、企業や業界団体による寄付は政策決定を歪(ゆが)めると重ねて強調し、禁止を求めた。
 自民党は野党の意見に謙虚に耳を傾け、企業・団体献金の禁止を受け入れるか、政党交付金の受け取りを辞退するか、決断せねばなるまい。「二重取り」が許される政治状況ではない。
 6月23日の国会会期末まで残り1カ月。自民党が頑(かたく)なな態度を改めなければ、首相が明言した法改正は実現せず、政権の命運が尽きることは避けられまい。