「顔を洗って出直してこい」 立民・野田佳彦元首相が自民の政治改革案を痛烈批判 衆院予算委(2024年5月20日『東京新聞』)

 
衆院予算委員会の集中審議が20日岸田文雄首相も出席して開かれ、立憲民主党野田佳彦元首相ら与野党の9人が質疑に立った。自民党以外の議員の質問内容は、自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件や、自民党が17日に提出した政治資金規正法改正案に集中した。
自民党との共同提出を見送った公明党や、野党からは、踏み込み不足と指摘されている自民党案。岸田首相は自民党総裁として、批判にどう答えたのか。(デジタル編集部)

13:01 「政治とカネ」の質問、自民は5分

最初に質問に立った自民党坂井学氏は、20分間の持ち時間があったが、「政治とカネ」に関する質疑は5分程度だった。
政治資金規正法改正への決意を問われた岸田文雄首相は、今国会で法改正を「確実に実現していかなければならない」と述べた。
坂井氏は残りの約15分間を、身寄りのない独居者の問題や能登半島地震の震災復興などの質疑に充てた。

13:22 首相、今国会での法改正に重ねて決意

公明党の中川康洋氏は、岸田首相に政治改革への覚悟を問いただした。首相は「信なくば立たず。国民の信頼なくして政治の安定はなく、政治の安定なくして政策の推進もない」と国民の信頼回復に努める考えを示した。
首相は裏金事件について、自民党の派閥解消や外部弁護士による聞き取り調査、一部議員への処分などに取り組んだと強調した上で、政治資金規正法改正を「何としても今国会で実現しなければならない」と重ねて表明した。

13:47 森元首相と岸田首相、説明に食い違い

岸田文雄首相を追及する野田佳彦元首相(衆議院インターネット審議中継より)

岸田文雄首相を追及する野田佳彦元首相(衆議院インターネット審議中継より)

立憲民主党野田佳彦元首相は、自民党安倍派で20数年前に裏金づくりが始まったとされる経緯を解明するために、当時の派閥会長だった森喜朗元首相を改めて聴取するよう、岸田首相に求めた。
森氏は、5月10日発売の「文藝春秋」6月号のインタビュー記事で、4月上旬の岸田首相による電話聴取の際、裏金づくりの経緯に関する詳細な質問はなかったと話している。これについて、野田氏は「(電話聴取は)ご機嫌伺いだ。『調査』じゃない」とただしたが、岸田首相は「聴取を行った」と答弁。森氏の説明と食い違いが生じた。
野田氏は「もう1回きちんと再聴取をするのが筋だ」とした上で、再聴取を行わないならば森氏の参考人招致が必要だと主張した。

13:55 「自民案は一番遅く、一番薄っぺらい」

野田氏は続いて、自民党政治資金規正法改正案を「他の党はみんな考え方をまとめてる。一番遅かったのが自民党。一番遅い上に、中身が一番薄っぺらい」と痛烈に批判。「顔を洗って出直してこいとたんかを切りたいぐらいだ」と迫った。
岸田首相は「実効的な法案を提出することができた」と答え、取り合わなかった。

14:16 領収書非公開は「プライバシーに配慮」

立憲民主党落合貴之氏は、政党から議員個人に支出される「政策活動費」の使途公開を巡る自民党案の考え方をただした。
自民案では、政党から50万円以上の支出を受けた議員が使途を党に報告し、党の収支報告書に記載する。だが、その内容は「組織活動費」「選挙関係費」など大まかな項目だけ。個別の日時や支出先は明らかにされず、領収書の添付も不要だ。
落合氏は「領収書を公開しないのに、これに使いましたと、どうやって国民が分かるのか」と追及したが、岸田首相は「政治活動の自由との関係において、個人のプライバシーや営業の秘密、政党の活動が公になることの不都合、こういった点にも配慮しなければならない」と主張した。

14:43 「自民は不透明なカネの温存に一生懸命」

日本維新の会青柳仁士氏は、自民党政治資金規正法改正案を「絶望的にお粗末な案」と厳しく批判。「国民が求めているのは政治と金の汚い関係を一掃すること」なのに、自民党は「派閥の政治資金パーティーという非常に小さいところに問題を限定している」と指摘した。
これに対し、岸田首相は「信頼回復という観点においては、これからも努力を続けていかなければならない大きなテーマだと考えている」と述べるにとどめた。
首相は、維新が求める政策活動費の領収書の開示については「党の内規」で定めるべきだと答え、企業団体献金の禁止にも消極的な姿勢を示した。
青柳氏は「自民党も岸田首相も、どうやって国民の信頼を回復するかということではなく、どうやって不透明なカネを温存するかということに一生懸命取り組んでいるということを確信した」と皮肉った。

14:59 首相「自民案は透明性向上に資する」

日本維新の会の藤田文武幹事長は、支出の詳細が見えない「ブラックボックス」と指摘される政策活動費について追及した。
政党から50万円以上の支出を受けた議員が大まかな項目だけの使途を政党に報告し、党の政治資金収支報告書に記載するとする自民党政治資金規正法改正案について、「支出の適正性を判断することはできるのか。その運用で全く問題ないとお考えか」と迫ったが、岸田首相は「透明性向上に資するものである」と答弁。
藤田氏は「報告したらおしまいだ」とたたみかけたが、首相は「透明性の向上に大きく資するものだ」と繰り返した。

15:17 企業・団体献金「全面禁止する理由はない」

共産党塩川鉄也氏は、自民党政治資金規正法改正案に企業・団体献金廃止が入っていないことを問いただした。
岸田首相は「多様な出し手による様々な収入を確保すること、これは政策立案における中立性やバランスの確保において重要」と答弁。「全面的に禁止する理由はなく、透明性の確保によって信頼性を高めていく」と述べた。
塩川氏は「企業の政治献金は本質的に政治を買収する賄賂だ」と主張したが、首相は「指摘は当たらない」と否定した。
衆院予算委員会で答弁する岸田文雄首相(衆議院インターネット審議中継より)

衆院予算委員会で答弁する岸田文雄首相(衆議院インターネット審議中継より)

15:29 政党交付金のペナルティ、首相「特別委で議論を」

国民民主党古川元久氏は、日本大学がガバナンス不全を理由として国の経常費補助金(私学助成)が給付されていない事例を引き合いに、政党交付金についても、ガバナンス不全の政党には減額や交付停止にするべきだと訴えた。
岸田首相は「(政治改革)特別委員会で、各党・各会派で議論する必要がある」と述べるにとどめた。古川氏は「何でも委員会で考えてもらえばいいというところに、総理の理念がないと申し上げたい」と批判した。

15:38 首相「献金で政策を左右、ありえない」

「有志の会」の福島伸享(のぶゆき)氏は、自民党に対する企業・団体献金が野党時代より、2012年の与党復帰後に増加したと指摘。「(企業は)与党だから献金している。単なる、政策を金で買う行為じゃないかと思うが、どうか」とただした。
岸田首相は「政治団体の収入は、多様な考え方、出し手、様々な収入を確保することが政策立案における中立公正、バランスの確保において重要」などと答弁。「一企業の献金が全体の政策を左右するということはありえない」と強調した。

各党の政治資金規正法改正案 自民党は、パーティー券購入者名の公開基準額を現行の「20万円超」から「10万円超」に引き下げることなどを盛り込んだ法案をまとめたが、「5万円超」への引き下げを求めてきた公明党との与党協議は不調に終わり、17日に単独で衆院に提出した。立憲民主党の改正案は、政治資金収支報告書の不記載などに政治家本人が責任を負う「連座制」を導入するとともに、政党から党幹部らに渡される使途公表が不要な政策活動費を禁止するなどの内容で、20日に国民民主党や会派「有志の会」と衆院に共同提出した。日本維新の会も週内に独自案を衆院に提出する方向だ。

与野党は、参院でも22日に「政治とカネ」をテーマに予算委の集中審議を開く方向で調整している。22日には法案を審議する衆院政治改革特別委員会も開かれるが、こちらは議員提出の法案を作成した実務者らを中心とした質疑となるため、岸田首相や閣僚らは出席しない。