中尾彬さん急死 81歳、心不全…5月上旬にはCM撮影をこなしたばかり 芸能界一のおしどり夫婦、愛妻・池波志乃悲痛「まだ『志乃~』と呼ばれそう」(2024年5月23日『サンケイスポーツ』)

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首に巻いた「ねじねじ」がよく似合った中尾さん。亡くなる直前まで精力的に仕事をこなした=2010年
映画やドラマ、バラエティーでも活躍した俳優、中尾彬(なかお・あきら=本名同じ)さんが16日に心不全のため死去した。所属事務所が22日、発表した。81歳だった。今年に入って足腰が悪くなったものの最近まで元気で、今月上旬にはCMの仕事をこなしたばかり。おしどり夫婦で知られた妻で女優、池波志乃(69)は「あまりに急で…」と悲しみの胸中を打ち明けた。
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【ツーショット】おしどり夫婦だった中尾彬さん・池上志乃さん夫妻
首に巻いたトレードマークの「ねじねじ」に加え、鋭い眼光と低音の魅力。ダンディーな芸能界の重鎮が突然他界した。 関係者によると、故人と遺族の意向で通夜は20日、葬儀・告別式は21日に近親者ら約30人で済ませた。それを受け、この日、所属事務所が公式サイトで発表。お別れの会の予定はない。志乃もコメントを寄せ「中尾の遺言で、このような形を取りました」と説明した。
同サイトや関係者の話を総合すると、中尾さんは今年に入り足腰が悪く体力も落ちたため医師の訪問を受けながら休養。入院はせず、時にはメディアの取材を受けたり、今月上旬にはCM撮影に臨み、12月に2人で行く予定の旅行を楽しみにリハビリをこなしていた。CM撮影時、移動は車いすだったが、大きな持病はなかった。
だが、15日に容体が急変。16日の夜中に自宅で志乃といるとき、眠るように息を引き取ったという。志乃は「あまりに急で、変わらない顔で逝ってしまったので、まだ『志乃~』と呼ばれそうな気がします」と悲しみを吐露。46年添い遂げた愛妻家らしい最期だった。同CMの撮影が最後の仕事となったが、オンエアされるか決まっていないため、詳細は明かされていない。
芸歴は60年以上。千葉県出身で、1961年、日活ニューフェイス第5期生に合格し、芸能界入り。二枚目俳優として活躍後、映画「極道の妻」「ゴジラ」の両シリーズ、ドラマ「暴れん坊将軍」で頭角を現した。
悪役や憎まれ役は秀逸で、98年のドラマ「GTO」では反町隆史(50)演じる主人公の教師をいびる教頭役で底力を発揮。バラエティー番組では俳優仲間の江守徹(80)とのコンビ、情報番組のテレビ朝日系「グッド!モーニング」では歯に衣(きぬ)着せぬ発言で人気を呼んだ。
私生活では70年に女優、茅島(かやしま)成美(81)と結婚し男児をもうけるも、75年に離婚。落語の神様、5代目古今亭志ん生の孫だった志乃と78年3月に再婚した。子宝には恵まれなかったが、夫婦で絵画展を開くなど、おしどり夫婦として知られた。
2007年に高熱で倒れ、救急搬送。急性肺炎と筋肉痛を伴う横紋筋融解症と診断され、絶対安静が続いたが、愛妻の看護に支えられ仕事復帰し大好きな酒を断った。志乃も前年の06年に末梢(まっしょう)神経に異常が生じる「フィッシャー症候群」を発症。互いの病気をきっかけに終活を考え、2018年に出した共著「終活夫婦」が話題になった。
その頃から千葉のアトリエや沖縄の別荘を処分するなど不要なものの断捨離を重ねたが、最後まで夫婦愛だけは残して天国へと旅立った中尾さん。その人柄と独特の存在感は多くの人の心に刻まれる。
中尾彬(なかお・あきら)
1942(昭和17)年8月11日生まれ。千葉県木更津市出身。61年、日活第5期ニューフェイスに合格。63年に武蔵野美術大学を中退し絵画の勉強のためパリに留学したが、64年に帰国し、劇団「民芸」に研究生として入団。同年に映画「月曜日のユカ」で本格デビューした。75年の主演映画「本陣殺人事件」で注目され、78年からテレビ朝日系「暴れん坊将軍」で徳川宗春役が当たり役に。83年にはフランスの絵画展「ル・サロン」でグランプリを受賞。近年はバラエティーにも多数出演した。