政府の基金見直し 監視強めて無駄をなくせ(2024年5月19日『産経新聞』-「主張」)

キャプチャ
国会議事堂(矢島康弘撮影)
 
 複数年度にわたる政策事業に対し弾力的に資金を投じられるよう積み立てる政府の基金は、予算の単年度主義の弊害を是正し、中長期的な視点で政策を推進するために活用すべきものである。
 ところが、その中には政策効果や目標が不明瞭で、無駄に積み上がっているものも多い。これを是正しなければならないのは当然だ。
 政府が国の基金事業を総点検し、その運営を見直した。基金を有効活用するために欠かせぬ布石である。まずはここで定めた方針の徹底を求めたい。
 同時に基金の運営状況への監視の目を強め、成果の検証やさらなる改善点の検討などを不断に続けることが肝要である。
基金残高は令和4年度末で計16兆6千億円に上る。政府は今回、152基金の200事業を点検した。その結果、新型コロナ対策関連などの基金から、使用見込みがない5466億円を国庫に返納することになった。また電気自動車(EV)の充電設備を設置するための事業など、休眠状態の11事業は6年度に廃止することも決めた。
 これまでの基金運営は極めて杜撰(ずさん)だった。昨秋の集計では定量的な短期成果目標を設けていない例が71事業に上り、事業終了時期を設定していないものも65事業あった。これでは効果的な運用など望むべくもない。
 政府は今回の見直しを通じて全ての事業に成果目標を設定させた。また、事業は原則10年以内に終わらせる。基金への予算の積み立ては3年程度とし、それ以降の予算追加は成果目標の達成状況を踏まえて判断することにした。基金の水膨れを避けるためにも欠かせぬ措置だ。
 基金事業を巡っては、補助金交付の基準策定や審査を民間に委託する例もあり、その多くを所管する経済産業省は今回、こうした外注を改めることを決めた。公的な資金を扱う以上、民間任せにすべきではない。
 一連の見直しで問われるのは実効性である。例えば基金事業の終了時期は平成18年に閣議決定された基準により「10年を超えない範囲内」で設定するとされていたのに、必ずしも守られてこなかった。同様のことを繰り返してはならない。基金はいったん設置されれば監視の目が行き届きにくくなりがちだ。そうならないよう透明性を高めることも等しく重要である。