財政の無駄をなくすには、まだ踏み込み不足ではないか。
政府は、複数年度にまたがる事業を推進するために設けた基金の見直し策をまとめた。多額の国費をつぎ込んだが、放置されているケースが目に付き、昨年秋に「総点検」を宣言していた。
管理に当たる独立行政法人などが国に返す資金は5400億円強となったが、点検前にめどが立っていた分を除くと、2300億円余りに過ぎない。16兆円超の残高全体のごく一部だ。
基金はコロナ禍で急増した。政府が対策の規模を大きく見せるために乱立させた。経済が正常化に向かっているにもかかわらず、本格的にメスを入れなかった。
半導体生産や脱炭素を進める基金もほぼそのまま残ることになった。兆円単位の巨額資金を官主導で効率的に活用できるのかとの疑問が出ている。毎年度審議される予算と異なり、国会などによる監視の目が届きにくいためだ。
政府は今回、設置から原則10年以内に終了させる方針を示した。2006年に閣議決定していたが、形骸化し、3割以上が期限を設けていなかった。成果が出なくても温存されてきたのが実態だ。ルーズな対応にあきれるばかりだ。