米中対立の長期化を見据え、中国としては今回の欧州訪問で西側の連携に 楔くさび を打ち込もうとしたのだろう。米欧は改めて結束を固め、国際秩序の維持に取り組まねばならない。
習氏とマクロン仏大統領は首脳会談で、今夏のパリ五輪期間中の「全世界での休戦」を訴える方針で一致した。ロシアが侵略しているウクライナや、中東で戦闘が続いていることを踏まえ、マクロン氏が訴えてきたことだ。
マクロン氏はかねて、欧州が米国と一定の距離を取る「戦略的自立」を唱えている。習氏としては、ある程度マクロン氏に同調する姿勢を見せることで、対中包囲網を主導する米国にフランスが追従しないことを期待したのだろう。
一方、首脳会談後の共同記者発表でマクロン氏は、軍事転用可能な製品の輸出管理を習氏が厳格に行うと「約束した」と述べた。
ロシアは、中国などから半導体を始めとする軍民両用の物資を輸入し、兵器の製造に流用しているとされる。マクロン氏はこの点で、中露の接近をけん制したようだが、習氏は共同記者発表で、この問題には言及しなかった。
中国は従来、軍事関連の輸出管理は「法に 則のっと り行っている」と主張しているが、その言葉を額面通りに受け取っている国は少ない。中国がロシアを事実上支える姿勢を見直さない限り、不信感を 払拭ふっしょく することはできまい。
プーチン露大統領は近く中国を訪問する。中露首脳がこれまでと同様、両国の蜜月関係を誇示するだけに終われば、国際社会は中国への失望を更に深めよう。
中国は「責任ある大国」を自任するのなら、ロシアに侵略停止を強く迫るべきではないか。
中国からの投資は、欧州の中でも基盤整備を進めている国にとっては魅力的に映るのだろう。だが、経済を中国に全面的に依存すれば、外交や内政が中国の意向に左右される事態に陥りかねない。