戦艦「大和」のカラー映像発見、空襲で水柱や水煙が上がるなか旋回する16秒間の姿を記録(2024年5月13日『産経抄』)

 太平洋戦争末期に撃沈された旧日本海軍の戦艦「大和」が山口県岩国市沖を航行しているカラー映像が、米国立公文書館の資料から見つかった。大分県宇佐市の市民団体が発見し、12日に発表した。大和の映像が公開されるのは初という。

航行する戦艦「大和」(1941年撮影)=大和ミュージアム提供
航行する戦艦「大和」(1941年撮影)=大和ミュージアム提供

 発見したのは、太平洋戦争の資料を収集、調査している「 とよ の国宇佐市塾」(平田崇英塾頭)。同塾は米国立公文書館の映像資料を入手し、米軍が空襲などの際に撮影した映像を分析し、公開している。映像は、18日に同市内で開くイベントで一般公開する。

米軍の空襲を受け、右旋回しながら航行する戦艦「大和」。艦影が航跡の先に黒っぽく映っている(1945年3月19日撮影)=豊の国宇佐市塾提供
米軍の空襲を受け、右旋回しながら航行する戦艦「大和」。艦影が航跡の先に黒っぽく映っている(1945年3月19日撮影)=豊の国宇佐市塾提供

 映像は1945年3月19日、米海軍機が数キロ離れた場所から撮影したとみられる。空襲で水柱や水煙が上がる中、航跡を残しながら右旋回する様子が、16秒間収められている。戦艦の姿は小さいものの、艦首から艦橋までが長く、艦橋が高いといった大和独特の特徴が見られるという。

 映像の航跡や水柱の位置が、大和の記録写真に写ったものと一致することと、米軍の戦闘記録などを踏まえ、同塾は大和だと判断した。大和の映像を巡っては、日本側が撮影したものも含め、これまで見つかっていなかった。

 広島県呉市海事歴史科学館大和ミュージアム」の戸高一成館長は「場所や日時などから、大和に間違いないだろう。写真は多いが、やはり映像もあったかと驚いた。歴史的に重要で貴重な発見だ」と評価した。

 分析した同塾の戦史研究家 織田おりた 祐輔さん(37)は「大和の映像は、ぜひ見つけたいと思っていた。今後の戦史研究に役立てばうれしい。もっとはっきり分かる映像も探したい」と話した。

 ◆ 戦艦「大和」 =広島県呉市の呉海軍 工廠こうしょう で1941年に建造された世界最大級の戦艦(全長263メートル)。旧日本海軍の旗艦になるなどしたが、45年4月7日、特攻作戦で沖縄へ向かう途中、撃沈された