国のあり方に関わる問題である。政治の責任で速やかに結論を出すべきだ。
皇族数の確保について、立憲民主、公明など各党が見解を発表した。自民党の案がまとまれば、衆参正副議長の下、政党間協議が始まる見通しだ。
政府の有識者会議が2021年12月に報告書を公表したが、その後、議論が停滞していた。
天皇陛下より若い世代の皇族は長女愛子さまら6人おられるが、皇位継承資格を持つ男子は秋篠宮さまの長男悠仁さましかいない。
皇室典範は、皇族女子は結婚すると皇籍を離れると定めている。手をこまぬいていれば先細りする一方だ。国民と触れ合う公務の担い手が減るだけでなく、皇室制度そのものが維持できなくなる。
報告書には、主に二つの方策が盛り込まれた。
一つは、皇族女子が結婚後も皇族の身分を保持する案だ。超党派で合意を目指し、早急に実現しなければならない。
旧宮家出身の男系男子が養子として皇室に入る選択肢も、併せて検討すべきだと報告書は記している。自民保守派が制度化を求めたものだ。
だが、旧宮家が皇室を離れたのは70年以上も前にさかのぼる。その子孫の民間人が唐突に皇族となることに、国民の理解が得られるのか疑問だ。
そもそも、皇室に入る意思を持つ男系男子がいるのだろうか。政府は「具体的に把握していない」と国会で答弁している。
両案が実現したとしても、一時的に皇族数を確保するための、その場しのぎの策にとどまる。今国会で結論を出し、持続的な皇位継承策を話し合う次の段階に進まなければならない。皇位継承権を女性に広げるかどうかの議論を避けて通ることはできない。
愛子さまは大学を卒業し、日本赤十字社に就職した。悠仁さまは9月に18歳を迎え成年となる。若い皇族の人生設計に関わる問題であり、時間的な猶予はない。
憲法で天皇は「日本国の象徴」と定められ、その地位は「国民の総意に基づく」と明記される。与野党は、国民の幅広い支持が得られる制度改正の道筋を示さなければならない。