米国から帰国し、報道陣を前に訪米の成果を報告する
拉致被害者家族会代表の横田拓也さん(中央)と事務局長の飯塚耕一郎さん(右から2人目)ら=東京・
羽田空港
北朝鮮による
拉致被害者の家族らが訪米して「全被害者の即時一括帰国と引き換えに日本政府による
北朝鮮への
人道支援や独自制裁の解除に反対しない」とする運動方針を米政権側に説明した。
拉致被害者、
横田めぐみさんの弟で、家族会代表の拓也さんによると、米側から正当で合理的な手段として支持されたという。
これを家族会の軟化ととらえるべきではない。あくまで局面打開に向けた「苦渋の内容」であり、運動方針へは、全
拉致被害者の即時一括帰国が実現しないまま親世代が死去した場合には「強い怒りを持って制裁強化を求める」と併記した。
めぐみさんの母、早紀江さんは88歳、
有本恵子さんの父、明弘さんは95歳だ。悲しいかな、残された時間には限りがある。これは
北朝鮮に向けた最後通告と受け取るべきである。
米政権の支持を取り付けたことで、いよいよ
北朝鮮は、
拉致事件の解決なしに自国の未来を描けないことに気づかなくてはならない。「
拉致問題は解決済み」と木で鼻をくくる対応を続ける限り、日米をはじめとするまっとうな国際社会から存在を認められることはない。
その意味で、国連
安全保障理事会で約15年にわたって
北朝鮮に対する制裁の実施状況を監視してきた「専門家パネル」の任期が4月30日で終了したことは極めて残念だ。
専門家パネルは09年の
北朝鮮の核実験を受けて設置され、制裁状況について情報を収集し、年次報告書を
安保理に提出してきた。1年の任期延長が毎年採択されてきたが、今回は任期延長をめぐる採決でロシアが拒否権を行使した。
日米韓など約50カ国は監視を続ける必要性を訴える共同声明を出した。日本政府は米国とともに新たな監視の枠組みを構築し、
北朝鮮に対する制裁の圧力を強化すべきだ。
拉致被害者の救出のためにも、である。