内臓脂肪を減らすことができるとする市販薬が登場した。肥満に伴う病気を予防する効果が期待されるが、頼りすぎないように注意したい。
健康の維持や向上につながれば、高齢化で膨らみ続ける医療費が抑えられる。
同じ成分の薬は、世界120カ国以上で既に使われている。
発売当日に薬局の店頭に並んだ「アライ」=東京都江戸川区で2024年4月8日、木許はるみ撮影
日本では、病気の治療ではなく、肥満症などの診断を受けていない人が予防のために使う薬として承認された。医師の処方なしに薬局で買える。
ただ、生活習慣病は、食事や運動で予防するのが基本だ。このため国側も慎重に議論し、通常は1年ほどで終わる承認審査に約4年を費やした。
乱用を防ぐため、購入できるのは腹囲が男性85センチ、女性90センチ以上あり、食生活の見直しや運動を3カ月以上続けている人などに限定した。直近1カ月の体重や腹囲の記録提示も必要だ。
薬局ではオンラインの研修を受けた薬剤師が、条件に該当するかを確認してから販売するルールも設けた。現場での厳格な運用が求められる。
下痢をしたり、おならと一緒に便が漏れたりといった副作用が出る恐れもある。服用を外出予定がない休日から始め、脂肪分の多い食事を控えるよう、メーカー側は注意を促している。
今回発売された薬は、自己管理で生活習慣改善に取り組む際の補助としての位置付けだ。ダイエット目的の使用は想定されていない。昨年承認された肥満治療の医療用医薬品では、美容クリニックなどでの安易な処方による乱用も問題になっている。
薬に頼り、健康的な生活を心掛けなくなってしまっては元も子もない。必要以上の「痩せ」を助長しないよう、メーカーや学会、薬剤師会は適切な使用の呼び掛けを徹底してほしい。