政治とカネ規制、自民党案は「一番遅い上に、一番薄っぺらい」野田佳彦元首相がバッサリ(2024年5月21日『東京新聞』)

 衆院予算委員会20日岸田文雄首相が出席し、裏金事件を受けて自民党が提出した政治資金規正法改正案などを巡り質疑を行った。首相は焦点となっている政策活動費の使途公開について「報告の仕方はそれぞれの政党の内規で定める」と述べるにとどめ、野党が求める領収書公開には後ろ向きな姿勢に終始。野党は「絶望的にお粗末」「出直してこい」などと厳しく批判した。
◆領収書公開はイヤ、パー券購入者公開基準も下げたくない
 現在は使途の公開義務がない政策活動費について、自民が17日に国会提出した改正案は、政党から50万円超の支出を受けた議員が「組織活動費」「選挙関係費」「調査研究費」など使途の項目を党に報告し、党の収支報告書に項目別の金額を記載するとしている。
 首相は20日の予算委で「(自民案は)どのような目的で、いつ、いくら使用されたかが明らかになり、国民の疑念の払拭に資する」と強調。領収書の公開については「個人のプライバシーや政党の活動が明らかになってしまう」と述べ、大まかな項目以上の公開に否定的な答弁を繰り返した。
キャプチャ
岸田首相=17日、首相官邸
 立憲民主党日本維新の会からは「領収書を公開せずに本当に使ったか分かるのか」「不透明なカネを温存しようとしている」などの批判が相次いだ。
 立民の野田佳彦元首相は自民案を「取りまとめが一番遅い上に、中身が一番薄っぺらい」と切り捨て、企業・団体献金の見直しへの言及がないことについて「平成の政治改革の積み残しだ。全く触れないのは信じられない」と非難した。
 政治資金パーティー券購入者名の公開基準額の引き下げも論戦の焦点となった。公明党や一部の野党は現行の「20万円超」から通常の寄付と同水準の「5万円超」への引き下げを主張するが、自民は「10万円超」への変更を掲げている。
 立民の落合貴之氏は「10万円以下ならパーティー券を購入しても氏名は公表されない。パーティーを倍の回数開けば今までと同じになる」と指摘。首相は、パーティー券は対価と位置付けられ、寄付と性格が異なると説明し、「公開基準を同じ額にする必然性はない」と言い張った。
 各党の政治資金規正法改正案は22日の衆院政治改革特別委員会で審議入りする。(井上峻輔)
キャプチャ2