地方の自治体に移住して地域振興に貢献しようと、意欲を持つ人は少なくない。受け入れる自治体は、円滑に活動できるようにするための環境整備に努めることが大切だ。
過疎地などに移り住んで地域活性化に取り組んでもらうため、総務省は2009年度に「地域おこし協力隊制度」を創設した。
隊員は任地に住民票を移し、最長3年間移住して自治体の臨時職員などとして働く。任期中は報酬を得られる。受け入れ自治体には国の財政支援がある。2023年度に活動した隊員数は7200人と、過去最多となった。
この制度は、人口減に苦しむ地方の振興を図るほか、任地への定住につなげる狙いもある。
22年度までに任期を終えた約1万1000人の中で、6割以上が任地やその周辺で就職したり、起業したりしたという。地方への移住を促進する一定の役割を果たしていると言えよう。
町の風景をアピールするため、「写真の町」を掲げる北海道東川町役場では、福岡県出身の男性隊員が町の国際写真フェスティバルなどを担当している。
学生時代に身につけた写真の技術を生かそうと、「写真の町」事業の推進に応募した。
東京での編集プロダクション勤務を経て宮崎県新富町へ赴任した女性は、町の広報誌のリニューアルや編集制作などに携わった。
女性は、現地での生活が気に入り、任期を終えた後も古民家を購入して町に残り、フリーの編集者として仕事を続ける考えだ。
一方で、任期途中で辞めてしまう人が一定数いるのも事実だ。
自治体側の募集目的が曖昧で、どんな活動をすればいいか、戸惑う場合もあるという。自治体は隊員に期待する任務を明確化し、認識を一致させることが重要だ。
隊員側も、自分の経験や技能がどう生かせるかを吟味し、応募することが望まれる。
隊員が地域住民と良好な関係を築けず、孤立するケースも珍しくない。自治体が責任を持って橋渡し役を務めるべきだ。
兵庫県豊岡市では、市と観光関連の外郭団体など、受け入れ先側の組織が連携し、隊員との意思疎通を密にしている。その結果、全国で有数となる50人以上もの隊員が活動しているという。
そのほか、試験的に現地で仕事を体験できる仕組みや、隊員経験者が現役隊員を支援する枠組みを設ける事例もある。そうした取り組みを参考にしていきたい。