「消滅危機」と言われても「どうしたらいいのか…」 名指しされた自治体、あの手この手尽くしたが(2024年4月254日『東京新聞』)

 民間組織「人口戦略会議」が24日に公表した報告書では、首都圏でも多くの市町村が「消滅可能性自治体」に分類された。10年前の同様の報告に続き、「消滅」と名指しされた自治体からは「できることは何でもやっているが…」とため息が漏れる。(昆野夏子、西岡聖雄、砂上麻子、福田真悟)
 
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定住促進に力を入れるが、「消滅可能性自治体」に分類された東京都檜原村
 
 東京都では、檜原村奥多摩町が2回連続で「消滅の可能性がある」と指摘された。両自治体とも移住・定住策に力を入れるが、「消滅」の危機からは抜け出せなかった。
 「まだ詳細を見ていないので何とも言えないが、データは結果として受け止めないといけない」と語るのは、奥多摩町の師岡伸公(のぶまさ)町長だ。
 同町は、65歳以上が人口の5割以上を占める一方、移住・定住者も1割を超えた。若者定住推進課を設置し、若者向けの低額賃貸住宅の提供や空き家のリフォーム費補助、子育て支援策などを推進する。師岡町長は「これからも人口増や移住・定住について積極的に施策を打ち、町を消滅させるのではなく、発展させたい」とめげる様子はない。
 神奈川県では「消滅可能性自治体」とされた6市町のうち、5市町が2回連続。自然減と社会減の対策が「極めて必要」と厳しい評価を突き付けられた箱根町の勝俣浩行町長は「残念だが、できることは何でもやってきた」とコメントした。
 同町は2019年度以降は、県内初となる公立小中学校の給食費無償化や、高校生をマイカーで送迎する世帯向けの補助など全国的にもユニークな子育て支援策を打ち出してきた。勝俣町長は「過去5年間の人口はほぼ横ばいで一定の成果は出ている」と自負ものぞかせる。
 三浦市は、1994年には5万5000人近かった人口の減少に歯止めがかからず、今年3月に4万人を割り込んだ。市政策課の担当者は「手をこまねいているわけではない」と強調するものの、事態打開の妙案は見つからない状況だ。
 
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 埼玉県では、秩父市など14市町村が再び「消滅危機」に名を連ねた。秩父市の自営業男性(63)は「そう言われても、どうしたらいいのか分からない」と困り顔。「おいしい水や地震に強いといった自然条件をアピールし、移住者を呼び込むしかないのでは」と話す。
 10年前の報告後、市は、移住相談センターの新設や子育て支援の拡充に取り組んできた。だが、若年女性人口の減少率は悪化。「大学進学などで市外に出た女性が、就職時に地元に戻らない傾向が影響している」と担当者。本年度は、市内の小中学校の親子を対象に、地元企業の魅力をPRするバスツアーを計画。女性の定着につなげたい考えだ。
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 経済界有志らでつくる民間組織「人口戦略会議」は24日、全国の市区町村のうち40%超に当たる744自治体で人口減少が深刻化し、将来的に「消滅の可能性がある」との報告書を発表した。