ガソリン代補助 段階的に縮小するべき時期だ(2024年4月21日『読売新聞』-「社説」)

 ガソリン価格の抑制のために、いつまでも巨額の予算を投じることはできまい。政府によるガソリン代の補助金制度は撤廃に向け、段階的に縮小していくべきだろう。
 政府は、原油価格の上昇を受けて2022年1月から始めたガソリン代への補助金について、4月末だった支給期限を延長し、5月以降も継続することを決めた。
 開始当初は2か月程度の一時的措置とされた。その後、ロシアのウクライナ侵略による原油価格の高騰などで、延長が繰り返されてきた。延長は今回で7回目だ。
 これまでは、延長の際に新たな終了期限も示されたが、今回はそれもない。政権が、補助金を打ち切ると世論の反発が起きかねないと恐れ、支給をやめられなくなっているのではないか。
 補助金は、石油元売り会社に支給し、卸売価格を抑えている。レギュラーガソリンの全国平均価格が1リットル175円程度になるよう調節している。補助金がなければ現在、ガソリン価格は1リットル200円超になるという。
 これまでに5兆円近くが投入され、富裕層や大企業も含めて一律に恩恵を受けているが、巨額の補助金支給には批判も出ている。
 中小の運送会社のように、トラック運転手の不足による輸送力の低下に見舞われた上、ガソリン価格の高騰にも苦しむ分野に的を絞るなど、効果的な財政支出としていく必要があろう。
 食品など多くの生活必需品が値上がりする中、家計支援のためにガソリン代だけを補助するという点にも疑問符が付く。
 価格決定メカニズムを無視した施策を、いつまでも続けるのは妥当とは言えまい。
 政府が推進している脱炭素にも逆行する。22年度に、産業部門の二酸化炭素の排出量は前年度より5・3%減ったが、運輸部門は増加し、自家用車による排出量は7・2%増えている。
 補助金が、公共交通機関の利用や、ガソリンの使用抑制への意欲を 削そ いでいる可能性がある。
 中東情勢の緊迫化で原油価格は再び高値水準にある。円安進行も重なって、今後も、ガソリン価格の値下がりは期待しにくい。補助金を段階的に削減した上で、高い燃料価格にも耐えられる経済構造にしていくことが大切だ。
 補助金によるバラマキよりも、電気自動車(EV)の普及や、省エネルギー技術の研究開発の支援などに、予算を振り向ける段階にきているのではないか。