リニア中央新幹線 政府は全通へ本腰入れよ(2024年4月20日『産経新聞』-「主張」)

 
実験線を走行するリニア中央新幹線の「L0系」改良型試験車両

 政府はリニア中央新幹線の整備計画をめぐり、6月に閣議決定する経済財政運営の指針「骨太の方針」に東京(品川)―大阪間の全線開業時期を「最速令和19(2037)年」と改めて明示する方向で調整に入った。

 JR東海が品川―名古屋間の開業延期を正式に表明し、開業の大幅な遅れが懸念されているだけに、骨太の方針に目標の堅持が盛り込まれる意義は小さくない。大阪までの全線開業時期の目標が大幅に後ろ倒しされれば、リニア開通への期待感が急速にしぼむ恐れがあったからだ。

 リニア新幹線は、平成26年に国が着工を認可した。2年後には、当時の安倍晋三首相が、財政投融資資金を3兆円投入して全線開業を8年前倒しする方針を決めた。

 ところが、難工事が予想されている南アルプストンネル建設をめぐり、静岡県川勝平太知事が環境問題を主な理由に強く反対し、いまだに同トンネルの静岡工区は準備工事にも着手できていない。

 このため令和9年を目指してきた品川―名古屋間の開業は大幅に遅れ、仮に今年中に同トンネルが着工できても工事に10年かかり、開業は最短でも16年以降にずれ込む見通しだ。

 名古屋までの開業が大幅に遅れる中、目標通りにリニア新幹線を大阪まで延伸できるかといえば、現実的にはかなり難しい。名古屋―大阪間のルートはいまだに決まっておらず、用地買収もこれからだからだ。

 品川―名古屋間の建設費だけでも当初見積もりの約5兆5千億円から約7兆円に膨れ上がっており、名古屋―大阪間の建設に着手するころには、人件費や建設資材のさらなる高騰も懸念されている。

だからといって「リニア19年全通」の旗を安易に降ろすわけにはいかない。リニアが全通すれば、品川―大阪間は最短67分で結ばれる。東京・中京・関西圏が一つの巨大経済圏となり、経済効果は計り知れない。

リニア新幹線建設は、令和最大の国家的プロジェクトである。障害となっていた川勝知事が辞任することで、局面は変わった。政府は5月に選出される新知事とJR東海との協議を仲介するとともに、19年全通の目標達成へ全力を尽くしてもらいたい。