8つのポイントをチェックして「エアコン節電」、正しく賢く、快適に使うには?(2024年4月19日『 GMO IDニュース 』)』)

最近は、地球温暖化の影響もあって3月中に夏日を迎え、10月ごろまで暑さが残ることもあり、以前よりエアコンを使う機会が増えたという家庭も多いのではないでしょうか。温暖化対策ももちろん重要ですが、熱中症を予防するのも重要ですので、特に夏場はエアコンをうまく活用したいところです。快適さを保ちつつ、できるだけ省エネを実現する方法を紹介しましょう。

1.ゴールデンウイーク前後には試運転をして動作確認しよう!

まずお伝えしておきたいのは、夏本番を迎える前に必ず試運転をしておくことです。エアコンの交換や設置は工事が必要ですが、特に夏本番になると工事の予約が取りづらくなり、繁忙期には1カ月以上先まで予約ができない場合もあるためです。

日本冷凍空調工業会は、エアコン試運転の啓蒙を目的に、4月10日を「エアコン試運転の日」と、2022年に制定しました。この時期から暑い日が出てくるので、だいたい4月の頭からゴールデンウイークくらいまでに試運転をしておきましょう。

試運転の詳しい方法は下の図を見てください。とはいえ、難しそうに見えるかもしれませんが、室内機(エアコン本体)、室外機の動作をチェックし、問題がなければ大丈夫です。問題が生じたら修理や交換を依頼しましょう。

エアコンの試運転の方法(「エアコンシーズン前点検パンフレット」より)

 

2.エアコンの省エネ、基本は「設定温度」

次に、エアコンの省エネのコツを紹介しましょう。

エアコンの省エネの基本は「設定温度」にあります。環境省の「家庭でできる節電アクション」によると、夏の冷房時の温度設定を1℃高くすると約13%の消費電力の削減になり、冬の暖房時の温度設定を1℃低くすると約10%の消費電力の削減になるとされています。

とはいえ、あまり極端な温度設定にすると快適性が損なわれてしまうため、快適性と省エネのバランスを取りたいところです。

政府が推奨する夏の「クールビズ」では室温28℃、冬の「ウォームビズ」では室温20℃が推奨されています。地球温暖化対策として推奨されているため、できるだけ守りたいところではありますが、住環境によってはなかなか難しいかもしれません。

政府は、冬は室温20℃、夏は室温28℃を推奨しています

 

 

3.風量は「弱」でなく「自動」に

また、節電をしたければ風量を「弱」にすればいいと思われがちですが、これは間違い。逆に消費電力が上がってしまう場合があります。

節電のためには、風量は「自動」が最も良いとされています。こうすることで、設定温度に到達するまでは高い冷房(暖房)能力と大風量で運転し、到達後は冷房(暖房)能力と風量を抑えて運転します。

風量を「弱」にしてしまうと、運転開始当初は同じように高い冷房(暖房)能力で運転するものの、風量が弱いため設定温度に到達までの時間が伸びてしまいます。場合によっては風量が弱いため設定温度にまで到達しない場合もあります。体に強い風が当たるのが苦手という場合を除き、風量を「弱」にするのはおすすめしません。

つまり、夏の冷房は26~28℃、冬の暖房は20~23℃くらいを目安に、風量は「自動」で運転するのが、快適性と節電のバランスが取れた運転方法です。

夏の時期は「冷房」や「除湿」ではなく「自動」を選びましょう

 

4.「除湿」運転での省エネはおすすめしません

夏場は、冷房運転よりも除湿運転の方が省エネになりますが、冷房運転の代わりとして除湿運転を使うことはおすすめできません。冷房で、室温を設定温度まで下げて維持すると、結果として湿度も下がります。除湿運転は「弱冷房除湿」とも呼ばれ、弱い冷房運転によって湿度を下げると、結果として室温も下がるということなのです。除湿運転のほうが消費電力は低いのですが、室温が下がりにくいため、猛暑日などの暑い日には、いくら運転し続けても快適な温度にならない危険性があるのです。

快適さと省エネ性のバランスを取りたいのであれば、「冷房」や「除湿」ではなく「自動」を選ぶのが最適です。温度を設定して自動運転を選べば、エアコンが冷房と除湿から最適なモードを選んで運転してくれるので、快適性を損なわずに省エネ運転をしてくれます。節電を目的に考えると、結局は運転モードも風量もすべて「自動」にするのが一番いいのです。 

5.30分程度の外出ならつけっぱなしの方がお得

外出時は、短時間であっても、こまめにエアコンの電源をオフにした方が省エネになると思われがちですが、これは間違いです。照明などはこまめにオフにした方が省エネになりますが、エアコンの場合は設定温度、室温、外気温、家の壁材などによって、消費電力が変化するためです。

エアコンをオフにして外出すると、冷房時には冷やした空気が、暖房時には暖めた空気が外気温近くに戻ってしまい、再び設定温度まで戻すには余計な電力がかかってしまいます。

ダイキン工業が2016年に実施した「夏のエアコンつけっぱなし検証!」では、夏のエアコンは「日中は35分まで、夜は18分までの外出ならつけっぱなしがお得」という結果になりました。こまめに消してしまうと、かえって室温が上がり快適性が損なわれてしまうため、1時間程度の外出であればつけっぱなしにしておくことをおすすめします。

6.サーキュレーターや扇風機を併用しましょう

広いリビングルームでエアコンを使用する場合、運転効率を高め、部屋全体の快適性を得るために、サーキュレーターもしくは扇風機を併用するのがおすすめです。特に広めのLDKでキッチンが閉じた空間になっている間取りなどでは、特定の場所にエアコンの風が届かないことがあるためです。

冷房の冷たい空気は下に降りていくため、下にたまった空気を循環させるためにエアコンを背にするようにサーキュレーターを設置しましょう。これによって床にたまった冷気を上手に循環させ、部屋全体を快適な温度にできます。

一方、暖房の暖かい空気は天井近くにたまってしまうため、エアコンが設置されている場所から対角線上の場所にサーキュレーターを設置し、エアコンに向けて空気を送ります。これによって天井にたまった暖気を拡散させることができます。

7.暖房時は加湿器を使って「体感温度」を上げましょう

先述した「ウォームビズ」では、暖房の室温は20℃が推奨されています。しかし20℃だと寒く感じる人も多いことでしょう。そこでおすすめなのが、「加湿器を使って体感温度を上げる」ことです。湿度が上がると体感温度が上がるため、同じ室温でも快適性がアップします。

下の図の、夏の暑さを数量的に表した指標の「不快指数」では、室温20℃の場合に湿度50~70%を保てば「快適に感じる」ことが分かります。

不快指数の早見表(「富山県における地球温暖化に関する調査研究」を元に筆者が図表化)

エアコンは、運転している部屋の空気を乾燥させる性質があります。冷房ではジメジメした夏の湿度を下げてくれるので快適さを生み出してくれますが、暖房時には部屋の空気をより乾燥させてしまいます。

過度の乾燥は健康を損ねる場合もあるため、加湿器をエアコンと組み合わせて使うことをおすすめします。湿度が高すぎると温度が低い窓などの部分に結露が生じやすくなるので、50~60%程度を保つようにするのがおすすめです。風邪の予防やインフルエンザなどの予防も含めて、加湿器をしっかりと活用してください。

8.フィルターはこまめに掃除、室外機の前をふさがない

さらに、節電の上で重要になるのが「フィルター掃除」と「室外機周辺の片付け」です。ダイキン工業が行った「フィルター掃除と室外機周辺の片付けによるエアコンの節電効果を検証」によると、フィルターに約3年分のホコリがたまった10年以上前のエアコンを「フィルター掃除」しなかった場合は、した場合に比べて約5割(48.9%)ものムダな消費電力量がかかってしまうことが分かっています。

フィルターはこまめに掃除しましょう

 

室外機の前に障害物を置かないこと

「フィルター掃除」をしない上に、室外機の前に障害物を設置したところ、消費電力量は倍増(約105.1%増)という結果になりました。つまり、フィルター掃除をして、室外機の前に障害物がない場合の約4倍もの電力消費量になるのです。シーズン前には必ずフィルター掃除を行い、室外機の前には障害物を置かないようにしましょう。

エアコンで節電するためのポイントをまとめましょう。

設定温度は控えめにして風量は自動にし、むやみにオン・オフしないこと。広い部屋ならサーキュレーター、暖房時は加湿器も有効です。あとはエアコンがしっかりとフルパワーで活躍できるように、フィルター掃除を行い、室外機の前の障害物は避けましょう。そして、シーズン前に試運転してから本格エアコンシーズンを迎えてください。
 
安蔵 靖志
Techジャーナリスト/家電エバンジェリスト
家電製品協会認定 家電製品総合アドバイザー(プラチナグレード)、スマートマスター。AllAbout デジタル・家電ガイド。ビジネス・IT系出版社を経てフリーに。デジタル家電や生活家電に関連する記事を執筆するほか、家電のスペシャリストとしてテレビやラジオ、新聞、雑誌など多数のメディアに出演。KBCラジオ「キャイ~ンの家電ソムリエ」にレギュラー出演するほか、ラジオ番組の家電製品紹介コーナーの商品リサーチ・構成にも携わっている。