合理的配慮の義務化 障害者との対話広げる時(2024年4月17日『福井新聞』-「論説」)

 

 障害のある人の希望に合わせて困りごとに対応する「合理的配慮」が4月から、企業など民間事業者にも義務付けられた。配慮のやり方は、障害の特性や場面、状況によって異なり、一律の正解はない。希望に全て応えられない場合もあり得る。障害のある人の声に耳を傾け、解決策をともに考える「対話」を広げる契機にしたい。
 合理的配慮は、日本が2014年に批准した「障害者権利条約」に、新たな概念として盛り込まれた。その後、障害者差別解消法が16年に施行され、福井県でも18年に共生社会条例ができた。
 ただ、この10年で理解は十分に広がっていない。内閣府が22年に行った世論調査で、障害を理由とした差別や偏見が「ある」「ある程度はある」との回答が計88・5%に上った。「ある」「ある程度はある」と答えた人に、5年前に比べ改善されたと思うか尋ねた質問では、「改善された」が58・9%に対し、「改善されていない」も40・4%に上った。合理的配慮を義務付ける改正障害者差別解消法を「知らない」と答えた人が74・6%を占めた。
 障害者権利条約で、従来は先天性や病気、けがなど個人の問題と捉えられがちだった「障害」の考え方が大きく転換した。足に障害のある人が利用しにくい場所がある時、原因は当事者の足の機能ではなく、段差がある、エレベーターなどがないといった社会がつくる障壁(バリアー)にあるとの理念に基づく。
 さまざまな設備やサービスを提供する上で障害者にとって何らかの障壁がある場合、本来の業務に関する要望に対しては、費用や人手など過度な負担にならない範囲で柔軟な対応が求められる。具体的には▽スロープを設置したり、高い所にある商品を取って渡したりする▽文章の読み上げや筆談で対応する―といった対応が挙げられる。
 障害のある人の申し出に全て応えられない場合に、どう解決するか。「前例がない」「特別扱いできない」と拒むことは法に反する。互いに意見を伝え合い、対話で代わりの手段を考えたい。
 県内の障害のある人(手帳所持者数)は21年度末現在で、身体、知的、精神合わせて5万449人、総人口の約6・6%に当たる。県が20年に行ったアンケートで、共生社会のイメージは「障害のない人も気軽に手を差し伸べる社会」が46・0%で最も多かった。当事者が意思表示しやすく、周囲も気負わず支える地域づくりに取り組むべきだ。