飲酒ガイドライン/健康に気遣い習慣見直そう(2024年4月17日『福島民友新聞』-「社説」)

 
 
 厚生労働省が、適切な飲酒量を判断するための指針「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」を初めてまとめた。指針を参考にアルコールとの付き合い方を見直していくことが重要だ。
 指針は酒の量だけでなく、酒に含まれる純アルコール量に着目するのが重要としている。純アルコール量20グラムはビール中瓶1本や日本酒1合、ウイスキーのダブル1杯などに相当する。
 最近は純アルコール量が表示された商品が増えてきた。健康リスクを知る上で、まずは自分がどの程度のアルコールを摂取しているのか、把握することが大切だ。
 指針によると1日当たりの純アルコール量で男性40グラム、女性11グラムの摂取を続けると脳梗塞の発症の恐れが高まる。女性の乳がんは14グラム、男性の前立腺がんは20グラムで発症しやすくなる。さらに、少しでも酒を飲むと男性は胃がん食道がん、女性は出血性脳卒中などのリスクがそれぞれ上昇する。
 飲酒による健康リスクは性別のほか、年齢や体質などによっても異なる。何グラムが適量という基準はなく、少量でもリスクを高めるものと認識する必要がある。
 一方、地域の行事や会社の懇親会でのコミュニケーションを円滑にしたり、観光資源として地域を豊かにしたりする酒は、県民の生活や文化、産業に深く根付いている。うまく付き合えばストレスを一時的に和らげる効果もある。
 指針は一律に断酒や減酒を求めるものではなく、不適切な飲酒を減らすことを目的としている。毎日酒を飲んでいる人や、1回の機会で多量の酒を飲む人のアルコールとの付き合い方を、どう改善していくかが現実的な課題だ。
 厚労省によると、飲酒をしている人は誰でもアルコール依存の回路が徐々に脳内で作られていく。習慣的に飲んでいると同じ量では酔いづらくなり次第に飲む量が増える、酒がないと物足りなくなる―などの流れで依存が強まる。急性アルコール中毒や飲酒を強要するハラスメントなど、短期間で起きる問題も看過できない。
 健康などに配慮した飲み方としては、飲酒の前や最中に食事を取る、合間に水を飲む、1週間のうちに飲まない日を設けることなどが有効となる。しかし依存性の高さに加え、酔って正常な判断ができなくなり、つい酒量が増えてしまう人は少なくないだろう。
 適切な飲み方を習慣づけるためには周囲の協力が必要だ。飲食店は酒と一緒に水を提供したり、家庭であれば飲み過ぎないよう家族がひと声かけたりしてほしい。