老老対決の先にある新時代、その変化とは=秋山信一(ワシントン)(2024年4月14日『毎日新聞』)

米南部フロリダ州のデサンティス知事(中央)と妻ケイシーさん=2023年5月13日、秋山信一撮影
米南部フロリダ州のデサンティス知事(中央)と妻ケイシーさん=2023年5月13日、秋山信一撮影

 11月の米大統領選は、民主党のバイデン大統領(81)と共和党のトランプ前大統領(77)が4年前に続いて再び対決する構図が固まった。本番までに高齢の2人に健康問題が浮上しないとは言い切れないが、熱心な支持者でない限り、「また、この2人か」という印象は否めない。

 では、2大政党に人材がいないかと言えば、そんなことはない。2人のどちらが勝っても、憲法の規定で任期はあと1期4年だけ。2028年の大統領選を見据えた戦いは既に始まっている。

 共和党の候補争いを取材中、意外な可能性を感じたのは、南部フロリダ州のデサンティス知事(45)の妻ケイシーさん(43)だった。22年にフロリダ州をハリケーンが襲った際、テレビ演説する知事の傍らに常にケイシーさんの姿があった。支援呼びかけや物資配布を担っていたのだが、存在感をアピールする「政治的野心」も感じていた。

 選挙集会でもケイシーさんの写真入りグッズを手にサインを求めるファンが多数いた。堅物で演説に面白みが欠ける夫と異なり、華やかな印象が強い。4年後ではないかもしれないが、いずれ政界に打って出る気がしている。

米中西部アイオワ州で支持者と記念撮影に応じるニッキー・ヘイリー元国連大使(中央)=2024年1月11日、秋山信一撮影
米中西部アイオワ州で支持者と記念撮影に応じるニッキー・ヘイリー元国連大使(中央)=2024年1月11日、秋山信一撮影

 最後までトランプ氏に抵抗したヘイリー元国連大使(52)は28年の有力候補だろう。「トランプ氏が出るなら立候補しない」と言っておきながら出馬。よく言えば柔軟、悪く言えば腰が定まらない政治家だが、政策面では保守派でありながら、中道派や無党派層に浸透したのは、人間的な魅力がなければ難しい芸当だった。

 一方、民主党にも「ポスト・バイデン」を狙う面々は多い。今回は「現職への反逆」と「トランプ氏の矢面に立つ」という二つのリスクを敬遠し、有力候補はバイデン氏に挑まなかった。しかし、ハリス副大統領(59)だけでなく、中西部ミシガン州のウイットマー知事(52)やレモンド商務長官(52)ら行政能力を評価される面々もいる。

 今回取り上げた5人は、いずれも女性だ。もちろん男性にも有力候補はたくさんいるが、女性候補の厚みは徐々に増している。実務能力と政治家としての魅力を兼ね備えた「女性大統領」が誕生する日を楽しみに待ちたい。