那覇中心地も土地規制 構造的差別そのものだ(2024年4月14日『琉球新報』-「社説」)

 行政やビジネスの中心である県庁所在地の一等地が監視下に置かれ、土地利用の制約を受ける。国の安全保障の名の下に、沖縄の経済や生活が犠牲にされる。他県では決して許されまい。沖縄への構造的差別そのものだ。

 安全保障上重要な施設や国境離島周辺の土地取引を規制する土地利用規制法の4回目の指定区域が告示され、沖縄県庁や那覇市役所を含んだ規制範囲の地図が公表された。
 施設の周辺約1キロを「注視区域」とし、司令部など重要度の高い施設の場合は「特別注視区域」に指定する。「注視区域」では、政府は不動産登記簿や住民基本台帳などの情報を収集し、土地の利用実態や所有者の個人情報を調べられる。「特別注視区域」はこれに加え、200平方メートル以上の土地の売買では事前届け出が義務づけられる。
 米軍施設が密集する本島中部のほとんどが「特別注視区域」に覆われることが問題となってきたが、那覇市の旭町や西、東町から小禄地区、豊見城市の瀬長島にかけての広い範囲も特別注視区域となることが明らかになった。
 県庁や市役所の行政機関のほか、オフィス街としてビジネスの中心である那覇市の泉崎や久茂地などにも「注視区域」の網がかかる。
 地価の上昇が続く沖縄県の中でも土地需要が高いエリアばかりだ。指定された区域では、国が「施設の機能を阻害する」と判断すれば、土地の利用中止を命じることができ、罰則もある。
 政府は不動産取引を規制するものではないと言うが、事前届け出や個人情報の調査、法に抵触すると判断されれば罰則もあるとなれば、取引に慎重となり、自由な経済活動を萎縮させる。
 「基地の機能を阻害する行為」が一体何を指すかが明確でないなど、政府の裁量で調査の対象が際限なく広がりかねない問題も大きい。
 狭い土地に米軍基地が集中し、自衛隊基地も拡張される沖縄では、必然的に県土は大規模に規制されてしまう。基地は住民を守ると言いながら、軍事施設を守るための法律が住民の生活、権利を制約する。主客転倒も甚だしい。
 沖縄県や市町村は規制の範囲を「最小限度」にするよう見直しを求めていたが、要請は聞き入れられなかった。日米同盟の安定が何より優先で、沖縄の負担や犠牲はやむを得ないとする態度だ。
 加藤裕弁護士は法の運用を透明化する重要性を指摘している。だが特定秘密保護法では、国会の審査会が求めても政府側が情報提供を拒む例が相次いでいる。土地利用規制法でも政府が詳細を明らかにしないことが想定される。
 だからこそ自治体の姿勢が問われる。国に公簿の提供や協力を求められた際の情報はきちんと開示する。住民の権利や地域経済を守るため、恣意(しい)的な法運用に歯止めをかける対応が必要だ。