高齢者が単身化 「異次元」の孤立対策を(2024年4月14日『沖縄タイムス』-「社説」)

 2050年には世帯の半数近くが1人暮らしとなり、高齢単身世帯は2割に達するとの将来推計が公表された。単身化は予想を上回るスピードで進む。


 同居する家族のいない高齢者を、誰が、どのように支えていくのか。地域社会からの孤立を防ぐ仕組みの構築が急務である。

 国立社会保障・人口問題研究所が5年ごとに実施する世帯数の推計によると、世帯総数は30年をピークに減少に転じ、50年には5261万世帯となる。

 そのうち44・3%に当たる2330万世帯が単身世帯。65歳以上の高齢者の1人暮らしは1084万世帯で全体の20・6%を占める。それぞれ20年と比較すると6・3、7・4ポイント上昇する見通しだ。

 核家族化と高齢化の進行で配偶者と死別し単身となるケースのほか、未婚率の上昇が影響しているとされる。

 人口規模が大きく、未婚率の高かった「団塊ジュニア」世代、バブル崩壊後の経済低迷で正社員になれず、未婚のまま年を重ねた人も多い「就職氷河期」世代が高齢期を迎えるからだ。

 1人暮らしの男性高齢者のうち未婚者の割合は20年の33・7%から50年には59・7%へ、女性は11・9%から30・2%へと大幅に増える。

 ライフスタイルが多様化する中、一生独身も生き方の選択肢の一つだ。

 一方で家族の手助けが期待できない単身高齢者の増加はこれまでにない社会の変化となる。

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 最も懸念されるのは孤立と生活困窮だ。

 単身男性の場合、仕事をやめると社会とのつながりが希薄になりがち。新型コロナウイルス禍も「孤独・孤立」に拍車をかけた。

 女性の場合は、男女の賃金格差や非正規が多いという雇用格差などが年金受給額に影響し生活困窮に陥りやすい。長期化する物価高も家計を圧迫している。

 生活の基盤となる住まいに関しても、高齢者は孤独死などのリスクから賃貸住宅への入居を断られるケースが少なくない。

 通院時の付き添いや入院、介護施設への入所などの身元保証も簡単にはいかない。

 国立社会保障・人口問題研究所の担当者は「医療や介護だけではなく、金銭管理や意思表示の支援など日常生活を支える仕組みを早急に考える必要がある」と指摘する。

 自らの問題として将来推計を直視したい。

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 時代の変化に合わせ、社会保障制度を世帯から個人単位にする議論や、男女の賃金格差の問題など根本部分に切り込む必要がある。 

 人手不足の課題を背負う介護保険制度は、その仕組みを持続可能なものとすることが重要だ。 

 今月施行された「孤独・孤立対策推進法」は、社会のあらゆる分野において孤独・孤立対策を推進するとうたう。

 示された未来を見据え、高齢単身者が地域とのつながりを保ちながら安心して生活できるよう、異次元の対策が求められる。