岸田首相の発言中、米高官はスマホ…会見現場で見えた「温度差」(2024年4月11日『毎日新聞』)

 

日米首脳による共同記者会見中の米政府の高官席=米ホワイトハウスで2024年4月10日、秋山信一撮影

日米首脳による共同記者会見中の米政府の高官席=米ホワイトハウスで2024年4月10日、秋山信一撮影

 米ホワイトハウスで10日開かれた日米首脳会談後の共同記者会見では、両政府の姿勢に温度差が見られた。日本政府の高官らは岸田文雄首相の発言を細かく確認しながら会見を見守ったが、米側はバイデン大統領の発言が覇気に欠け、高官が首相の発言中にスマートフォンをいじる姿も散見された。

 記者会見ではホスト役のバイデン氏が約5分間、原稿を映し出す「プロンプター」を見ながら発言した。日米関係の進展を強調した後に「岸田首相個人もたたえたい」と語り、日韓関係の改善を進めたことなどを称賛した。

 岸田氏は用意された原稿に従って約10分間発言した。日本の高官が原稿にチェックを入れながら発言に漏れや間違いがないか確認する姿が見られた。一方、岸田氏の発言が冗長だった面もあるが、この間、米政府の高官はスマートフォンを操作したり、同時通訳のヘッドホンを外したり、ツメをいじったりする姿が見られた。

日米首脳による共同記者会見中に岸田文雄首相の発言を確認する日本政府高官=米ワシントンで2024年4月10日、秋山信一撮影
日米首脳による共同記者会見中に岸田文雄首相の発言を確認する日本政府高官=米ワシントンで2024年4月10日、秋山信一撮影

 記者会見の同席者にも違いがあった。首脳会談の前半、秘匿性が高い重要な話をすることが多い少人数会合には、日本側から上川陽子外相、秋葉剛男・国家安全保障局長、米側からブリンケン国務長官、サリバン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)が出席した。しかし、会談後の記者会見には、ブリンケン、サリバン両氏の姿はなかった。

 米外交は今、イスラエルによるパレスチナ自治区ガザ地区侵攻への対応で多忙を極めている。ロシアのウクライナ侵攻、イスラエルに在シリア公館を攻撃されたイランへの対処もある。バイデン外交を支える最側近の2人の不在は「国賓待遇とはいえ、日本の相手だけをしているわけにはいかない」という事情を表していた。

 バイデン氏も会見後半の質疑に入ると、語調が弱くなり、記者席の最前列でも聞き取りにくい場面が度々あった。81歳と高齢でも選挙集会では力強い演説をすることがあるが、関心や緊張感の低い場では声に張りがなくなる場面もある。今回も他の行事と比較すると、力の入れように弱さも垣間見えた。【ワシントン秋山信一】