厚生労働省は、一定の給与がある高齢者の厚生年金を減額する「在職老齢年金(在老)」について、廃止を含め見直しの検討に入る。今夏にも公表する財政検証の際に合わせて示す「オプション試算」に在老の全廃もしくは一部緩和の方向性を盛り込む。
厚労省は5年に1度の公的年金制度の見直しに向け、社会保障審議会の部会で議論中だ。制度の見直しに合わせ、公的年金が制度を維持できるか確認する「財政検証」を実施する。一定の経済前提を設け、おおよそ100年先までの保険料収入や給付額の将来推計を実施し、年金財政の状況をチェックする。オプション試算は、制度変更した場合に将来の年金給付にどのような影響を与えるかを測るもので、厚労省がどのような制度変更を検討しているかの目安になる。
現行の在老では、65歳以上の人で賃金と厚生年金の合計額が月50万円を超えれば、超えた分の半額を厚生年金額からカットされる。人手不足で高齢者の就業率が上昇している中、対象者は約49万人に上る。経済界や与野党から「働き損を意識して年金額が減らないよう就業調整することにつながる」との批判もあり、厚労省は廃止を含めて見直したい考え。ただ、「高所得者の高齢者優遇」との批判もある。
オプション試算では在老の他、短時間労働者への厚生年金の適用拡大▽基礎年金の保険料を納める期間の5年延長▽物価や賃金の上昇幅よりも年金額の伸びを低く抑える「マクロ経済スライド」の調整期間の基礎年金と厚生年金での一致▽厚生年金保険料の算出の基となる月収上限(65万円)の見直しが盛り込まれる方針だ。【宇多川はるか】