OK牧場の至言(2024年4月11日『熊本日日新聞』-「新生面」)

 きょうは「ガッツポーズの日」だそうだ。ちょうど50年前、ガッツ石松さんがボクシング世界ライト級王座を奪い、拳を突き上げて喜んだ日にちなむ。引退後は芸能界へ。いかつい表情で“迷言”を放つと、つい笑ってしまう

▼決めぜりふ「OK牧場」は、対人関係の態度を仕分ける心理学用語でもある。「私」からみた「私」と「あなた」は、それぞれ「OKな人」か。自他ともに「OK」と認めるのが理想だが、ときには「私」を嫌いになったり、「あなた」を恨めしく感じたり

▼春は「私」に、たくさんの「あなた」を連れてくる。熊本県内の小中高校では今週、相次いで入学式が開かれている。真新しいランドセル、ぱりっとした制服姿、緊張した面持ちが初々しい。そのうち不安は解けて、笑顔の輪が広がるのだろう

▼友人と仲良く勉強に励むもよし、スポーツで切磋琢磨[せっさたくま]するもよし。お父さん、お母さんはもちろん、教壇の先生も温かく見守っている。学校生活になじめなくても、きっと「OK」と認めてくれる「あなた」が見つかる

▼ガッツさんは中学を出て、ボクサーを目指した。世界王者になるまで11戦も敗れながら、自らを信じて練習を重ねた。「運は寂しがり屋なの。頑張っている人についてくるんだ」。OK牧場の至言である

▼こちらは名言か迷言か。「私はボクシングに出会い、人生が380度変わった」。正反対に一変する180度でなく、1周回って元に戻るのでもない。20度でも変われるのなら、新たな出会いも悪くない。

 

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