国の基金見直し 無駄の温床を一掃せよ(2024年4月11日『東京新聞』-「社説」)

 

 

 政府が、中期的な政策を推進するために積み立てている「国の基金」の一部を廃止する方向で調整を始めた。基金はコロナ禍を機に極端に膨張し、財政規律の緩みを象徴する存在となっている。
 一部の廃止にとどまらず、すべての基金にメスを入れ、無駄の温床を一掃せねばならない。
 廃止の可能性が高いとみられる基金は電気自動車(EV)充電設備を設置する「省エネルギー設備導入促進基金」、東京電力福島第1原発事故で企業立地が落ち込んだ地域を支援する「環境対応車普及促進基金」など10程度。政府のデジタル行財政改革会議が管理費だけの支出が続くなどとして「無駄」と判断した。これらとは別に、存続は認めるものの余剰金を国庫に返納させる基金もある。
 国が所管する基金は現在180を超え、全体の残高は2022年度末で約16兆6千億円に上る。19年度までは2兆円台で推移していたが、3年間で7倍以上に膨らんだ=グラフ。コロナ禍で財政規律が緩む中、各省庁が省益を確保するため基金を乱立させたことが膨張の主な要因で、廃止を含む厳しい見直しは当然である。
 政府は4月下旬に検証結果を公表する。コロナ禍前の通常時の残高に戻すよう努めるべきだ。
 国際通貨基金IMF)は2月に行った対日経済審査で、基金について「3分の1は終了年度が特定されていない」と指摘した。
 終了期限のめどさえ立たずに放置された基金が乱立する現状にはあきれるほかない。今回の検証を機会に、各基金の管理体制を根本から見直さねばなるまい。
 国の予算は通常、会計年度ごとに編成され、国会審議と議決を経て執行されるが、複数の年度にまたがる中期的な事業を対象にする基金には、国会の監視の目が十分に届いているとは言い難い。
 国会は基金を巡るこれまでの審議の在り方を改め、すべての基金を丹念に検証し、存廃や規模の妥当性について徹底的に審議し直すべきだ。それこそが、国家予算の執行には議会の議決を必要とする財政民主主義の実践である。