護送車の事故を幸いにと囚人2人が手錠でつながれたまま逃走を…(2024年4月10日『東京新聞』ー「筆洗」)

 
  護送車の事故を幸いにと囚人2人が手錠でつながれたまま逃走を図る。米映画の『手錠のまゝの脱獄』(1958年)。シドニー・ポワチエさんが若々しい

▼物語の設定にわくわくする。手錠で互いから離れられない囚人の1人は白人でもう1人は黒人。2人は何かと反目し合うのだが、次第に助け合い、心を通わせるようになっていく。手錠でつながれた仲の悪い2人という設定はドラマを生みやすいのか、高倉健さん主演の『網走番外地』(65年)にも似た場面があったっけ

▼コンビニ大手2社の決断に映画の場面がつい浮かんだが、あまり適切ではなかったか。ファミリーマートとローソンが岩手、宮城、秋田の3県で商品の共同配送を始めるそうだ。大手同士の本格的な連携はこれが初めてという
▼深刻な状況に競い合う2社もいがみ合ってはいられず、息を合わせるしかなかったのだろう。状況とはもちろん、運転手不足が心配される物流の「2024年問題」である
▼1台のトラックを2社で共有して荷物を運ぶという。運転手が足りないのなら共有すればよいと言うのは簡単なれど、長年のライバル同士とあれば、実現までには難しい調整もあっただろう
▼今後、3県以外への拡大も検討するそうだ。「呉越同舟」ならぬ「ファミマ・ローソン同トラック」。うまく進めば、二酸化炭素の排出量抑制というオマケも付く。