政治部記者が解説する。 「国民的な政治不信を招いた裏金事件にも、岸田文雄総理は“襟を正す”“実態把握の努力を続ける”と繰り返すばかり。政治倫理審査会に出席した安倍派幹部たちも“知らぬ、存ぜぬ”との態度に徹しました。業を煮やした野党が目をつけたのが加藤氏でした」
その理由は明らかだ。 「野党議員からの質問に“えーと”“あのー”と、目を泳がせながら、しどろもどろの答弁を連発しています。勉強不足は明らかで、その姿はSNSでも批判にさらされていますから」
野党の“オモチャ”に
目下、彼女が追及されているのが「子ども・子育て支援金」だ。少子化対策の財源として公的医療保険料に上乗せして徴収するもので、政府は総額約1兆円を確保する方針を示している。
「岸田総理は加入者1人当たりの負担を“月500円弱”と説明してきました。ところが、実際には月1000円を超えるケースもあります。これまで総理は何かと加藤氏をフォローしてきました。この2月、野党は負担額の齟齬(そご)に関する質問を、総理が不在だった予算委員会で加藤氏にぶつけたのです」
ここで質問者が“月1000円を超える可能性もあるのでは”と質すと、加藤氏は“可能性はあり得る”とあっさり“白状”。野党の狙い通り、答弁能力の拙(つたな)さを露呈したのである。
「動揺したのか、その後も加藤氏は答弁台で官僚が用意した資料を何度もめくり続けました。自席に戻る際には他の大臣席と間違えて、苦笑いを浮かべる場面も」 とある霞が関の関係者が「資料のどこを読めばいいかも、いま一つ理解できていない」と苦笑いするように、加藤氏はすっかり野党の“オモチャ”と化している。
異例の対応策
もっとも最近の加藤氏は「大臣室で答弁トレーニングに励んでいる」(同)そうだが、不安の尽きない官邸は異例の対応策を取っている。
自民党幹部が耳打ちする。 「委員会では総理をはじめ、鈴木俊一財務相、松本剛明総務相など少子化政策に関連する閣僚をそろえて、加藤さんが答弁に立つ機会を減らそうとしている。これ以上、彼女に政策の実情を“暴露”されては堪らないし、さりとて、交代もさせられない。
本来なら彼女が答弁すべき質問でも、総理や他の大臣が率先して挙手しているのはそのせいだよ」
先の霞が関関係者は、この“鮎子シフト”を官僚サイドも採用していると明かす。 「資料にマーカーを引いて渡したり、事前レクに長い時間をかけたり。そのかいあってか、最近は答弁が“少し安定してきた”とか。このところ、加藤さんは父親の紘一さんを意識してか黒縁メガネ姿が目立ちます。その姿も好評で“鮎ちゃんを守ってあげないと”なんて軽口も出ていますね」
自民党閣僚経験者が言う。
「総理は“閣僚の5人を女性にしたい”というだけで加藤さんを登用した。44歳とまだ若く、2児の母親だから“こども政策に適任”と考えたんでしょうが、浅慮が過ぎましたね」
少子化対策は国の将来を左右する喫緊の課題。こんな体たらくで大丈夫か。
「週刊新潮」2024年4月4日号 掲載