良質な睡眠 まず生活習慣を改めてみては(2024年4月8日『読売新聞』-「社説」)

 質の高い睡眠は、心と体の健康維持に欠かせない。一人ひとりが生活を改善するだけでなく、企業や学校でも快眠のための取り組みが必要だ。

 厚生労働省の調査によると、20歳以上の4割は、睡眠不足とされる6時間未満しか寝ていなかった。仕事のほか、就寝前にスマートフォンやゲームに熱中していることなどが背景にあるという。

 睡眠不足は高血圧や糖尿病などの病気につながりやすい。厚労省の「過労死等防止対策白書」は、睡眠不足はうつ病のリスクを高めるとして注意喚起している。

 ただ、必要な睡眠時間は個人差があり、年代や昼間の活動量によっても違うとされる。

 厚労省は、健康づくりのための睡眠ガイドを改訂し、推奨する睡眠時間を年代別に示した。成人は6時間以上、子供は小学生が9~12時間、中高生は8~10時間眠るのが望ましいとしている。

 高齢者には長い睡眠は必要ないため、健康上の問題がなければ、寝床に8時間以上いないように注意することが大切だという。

 また、平日の睡眠不足を補おうと、休日にまとめて眠る「寝だめ」は、生活のリズムが崩れ、健康を損なう恐れがある。

 国は、睡眠と健康の留意点について、周知に努めてほしい。

 睡眠に問題があると、仕事の能率低下や事故にもつながりかねない。企業も、働く人の睡眠の改善に配慮する必要があろう。

 中には、睡眠を管理するアプリを活用し、社員の健康増進に役立てようとする企業もある。適度な昼寝は仕事の効率を高めるため、社内に専用スペースを設ける試みもある。各企業が工夫して取り組みを進めてもらいたい。

 近年、睡眠関連品の市場規模は拡大している。快眠のための寝具や睡眠の質を計測する機器など多くの商品が販売されており、関心の高さがうかがえる。

 個人の取り組みとしては、生活習慣の見直しも効果的だ。たとえば、入浴は就寝の1~2時間前にし、寝酒やカフェインの過剰摂取を避けることが挙げられる。

 心配なのは子供の睡眠不足だ。小中高生とも7時間前後が多い。夜更かしが習慣化しないよう、大人が気を配らねばならない。

 堺市では小中学生を対象に睡眠教育を実施している。睡眠の効用や必要な時間を教えるほか、睡眠の状況を記録させ、問題があれば保護者も交えて面談し、改善策を探っている。こうした取り組みを各地で進めることが重要だ。

健康づくりのための睡眠ガイド 2023が公表... | さんぽLAB