4月に入り、世はまさに「新生活」シーズン。新入学、新入社とめでたいムードもある一方で、今年度も円安による物価上昇が続いています。
【年金一覧表】厚生年金「月平均で20万円以上」もらえる人の割合は?男女別の受給額を一覧でチェック(出所:厚労省など)
そんななかで、今年から年金生活を開始されるシニアもいらっしゃると思います。 2024年1月、厚生労働省は「令和6年度の年金額改定についてお知らせします」を公表。これによると、2024年度の公的年金額は2.7%増額され、標準的な夫婦の場合に平均月額約23万円になるとされています。
それでは、このモデル例で挙げられている「20万円以上」年金を受給する人の割合はどれくらいでしょうか。 今回は2023年12月に厚生労働省が公表した「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」を参考にしていきます。記事後半では、金額別に厚生年金の受給権者数を見ていきましょう。 ※編集部注:外部配信先ではハイパーリンクや図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際はLIMO内でご確認ください。
【厚生年金と国民年金】公的年金制度の仕組みをおさらい
公的年金は、現在働いている人たちが支払った保険料から高齢者などの年金受給者に支給される制度です。この年金の資金源には、保険料のほかに年金積立金や税金も使われます。
公的年金は国民年金と厚生年金の2種類に分かれています。国民年金は日本国内の20歳以上60歳未満の全ての人が加入し、保険料は一律です。 一方、厚生年金は公務員やサラリーマンなどが加入できます。保険料は所得に応じて変わり、将来の年金額も加入期間や納付額によって変動します。
この2つの年金制度が重なり合うことから、「2階建て構造」と呼ばれています。 まずは、ねんきん定期便や保険証書などを確認して、自分の加入状況を確認しましょう。 厚生年金などの公的年金は、年収に応じた保険料を支払うため受給額には個人差が大きくあります。 つまり、月平均で20万円以上受給できる人もいれば、10万円未満の場合もあるというわけです。 次の章では、1万円ごとの厚生年金受給権者数をチェックしていきましょう。
【一覧表付き】厚生年金をひと月「平均20万円以上」もらえる人の割合
ここからは厚生年金の平均受給額や男女別の受給額を見てみましょう。
●【厚生年金】受給額ごとの人数(1万円刻み)
・1万円未満:6万1358人
・1万円以上~2万円未満:1万5728人
・2万円以上~3万円未満:5万4921人
・3万円以上~4万円未満:9万5172人
・4万円以上~5万円未満:10万2402人
・5万円以上~6万円未満:15万2773人
・6万円以上~7万円未満:41万1749人
・7万円以上~8万円未満:68万7473人
・8万円以上~9万円未満:92万8511人
・9万円以上~10万円未満:112万3972人
・10万円以上~11万円未満:112万7493人
・11万円以上~12万円未満:103万4254人
・12万円以上~13万円未満:94万5662人
・13万円以上~14万円未満:92万5503人
・14万円以上~15万円未満:95万3156人
・15万円以上~16万円未満:99万4044人
・16万円以上~17万円未満:104万730人
・17万円以上~18万円未満:105万8410人
・18万円以上~19万円未満:101万554人
・19万円以上~20万円未満:90万9998人
・20万円以上~21万円未満:75万9086人
・21万円以上~22万円未満:56万9206人
・22万円以上~23万円未満:38万3582人
・23万円以上~24万円未満:25万3529人
・24万円以上~25万円未満:16万6281人
・25万円以上~26万円未満:10万2291人
・26万円以上~27万円未満:5万9766人
・27万円以上~28万円未満:3万3463人
・28万円以上~29万円未満:1万5793人
・29万円以上~30万円未満:7351人
・30万円以上~:1万2490人
※国民年金部分を含む
・〈全体〉平均年金月額:14万3973円
・〈男性〉平均年金月額:16万3875円
・〈女性〉平均年金月額:10万4878円
月平均受給額は14万3973円であり、男女で約6万円の差があります。これは、女性が結婚や出産などの家庭事情により職場を離れることで加入期間が短くなることや、賃金の格差などが影響していると考えられます。
また、厚生年金をひとりで「月平均20万円以上」受給している人の割合は14.8%という結果になりました。そのうち男性の割合は21.7%であり、一方で女性は1.2%にとどまっています。
男女の厚生年金受給額の差は将来的に縮小する可能性がありますが、現在でも女性がフルタイムで働き続けることが難しい状況が続いています。
そのため、男女の受給額の割合が同じになるのは、まだまだ時間がかかるといえそうです。
【老後資産】今からできる資産形成の方法3つ
ここまで、厚生年金の平均受給額について確認してきました。長く続いていく老後生活で、年金だけを頼りに生活するのは難しそうですね。
ここからは、老後に向けて年金以外の資産をつくる際の3つのポイントをお伝えします。
●成長が期待できる資産に投資する
資産を増やすうえで、成長が期待できる資産にフォーカスすることは非常に重要です。
NISAなどで投資信託を購入する場合、経済成長が見込まれる地域に投資するファンドを選択してみるとよいでしょう。
例えば、新興国や先進国を含んだ世界資産に投資すると、仮に年率6%で運用できた場合、12年後には資産が2倍になります。
長期的な視点で、成長が見込まれる世界経済に着目することが重要です。
●「長期積立」で時間を味方につける
次に重要なのが、「長期間・積立方式・分散投資」のキーワードです。
金融商品の価格は日々変動しますので、一括で大きな金額を投資すると、価格が下落した場合に損失が大きくなる可能性があります。
一方で、定期的に積立投資を行う場合は、「価格が高い時には少なく、価格が低い時には多く」投資することができます。
投資のタイミングを分散させることで、平均購入単価が安定し、価格変動の影響を受けにくくなります。
リスクを最小限に抑えつつ、運用益を安定させるのが理想的です。
●万が一の事態に備える
積立資金が底をついた場合、資産運用そのものを続けるのが難しくなるかもしれません。
怪我や病気、自然災害などの予期せぬ出来事は、いつ起こるかわかりません。
収入減や疾病などのリスクに備えるため、最低限の保障を保険商品で確保することが望ましいでしょう。
自分の老後について具体的なイメージをもとう
厚生年金には個人差があり、20万円以上の年金を受け取っている人は「14.8%」とそう多くないことがわかりました。
年金開始時期には引退して老後を楽しむには、そのための準備が必要でしょう。一例として「つみたてNISA」や「iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)」の利用などが挙げられます。
資産運用は、運用期間を長くとればとるほど、リスクが軽減してリターンが安定する傾向があります。若いうちにスタートすることで、複利のメリットを最大限に活かし、効率よくお金を育てていくことも可能です。
自分に合った資金の用意方法を探してみましょう。
参考資料
・日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」
・厚生労働省年金局「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
・厚生労働省「令和6年度の年金額改定についてお知らせします」
足立 祐一