入学シーズンである4月初旬は近年…(2024年4月6日『毎日新聞』-「余録」)

東京都心で桜の満開が発表される中、見ごろを迎えた目黒川の桜を背景に写真を撮る女性=東京都目黒区で2024年4月4日、手塚耕一郎撮影

東京都心で桜の満開が発表される中、見ごろを迎えた目黒川の桜を背景に写真を撮る女性=東京都目黒区で2024年4月4日、手塚耕一郎撮影

 入学シーズンである4月初旬は近年、関東では桜の開花期が過ぎていることが多かった。今年は東京などで開花が遅れ、いまが花盛り。地域によっては来週、「桜と入学式」のシーンが多くみられるかもしれない

▲3日付などの毎日小学生新聞に掲載された作家の辻村深月(つじむら・みづき)さんのインタビューは、新学年を迎えた子どもたちへのエールのように思えた。「かがみの孤城(こじょう)」などで知られる辻村さんは小中高生のファンも多く、同紙にエッセー「『あなたの言葉』を」を連載中だ。書籍として出版されたのを機に、小中学生の質問に答えた

▲辻村さんのメッセージは「子どものころの気持ちは、なるべく覚えておいてください」。今の気持ちを大切にすること。エッセーによると辻村さん自身は子どものころ、気持ちを口に出せなくても書き留めていた

▲「子どもの時間と大人の時間はつながっている」と辻村さん。子どもと大人の時代は別人のように捉えられがちだ。だが、「大人はびっくりするくらい、子どもの自分の延長」だという指摘にはっとした

▲「かがみの孤城」の主人公は、学校に行かなくなった少女だ。子どもたちも、昨今は自己表現を求められることが多い。それは大切だが、発言できなくても気持ちや言葉を大事にするようにと辻村さんは励ましているように感じた

▲大人はどうか。同じ場所に咲く桜も毎年、見る気持ちはさまざまだ。けれども確かに、過去の自分とつながっている。桜前線は、人々の思いを乗せて北上している。