命のリレー(2024年4月7日『秋田魁新報』-「北斗星」)

 にかほ市の勢至公園でソメイヨシノのつぼみが色づき、早ければきょうにも開花しそうだという。由利本荘市の本荘公園では5日、県内トップを切ってさくらまつりが始まり、こちらも開花は間近だ

▼県内で2例目となる臓器移植法に基づく脳死判定が秋田大医学部付属病院であり、4日に臓器提供が行われた。その記事を読んで「あの時も桜の季節だったなあ」と、24年前の県内初の脳死判定を思い起こした

脳死判定が行われたのは由利組合総合病院(由利本荘市)で、国内6例目だった。判定は2000年4月15日、臓器提供が行われたのは翌16日。同年の本荘さくらまつりの開幕は14日だった。その春見た桜に、普段目立たない人が何かの際にすぐれた天分を現すたとえ「桜は花に顕(あらわ)る」という言葉を思った

▼臓器提供は移植希望者を救う「命のリレー」とも呼ばれた。今回もそれは同じだ。本人の意思をくんだ家族の尊く重い決断によって実現できた

臓器移植法が1997年に施行されて以来、脳死判定の臓器移植は今回が1052例目。改正法施行で要件が緩和され、提供は増加傾向という。ただ約1万6千人という移植希望者から見れば懸け離れている

▼運転免許証、健康保険証、マイナンバーカードなどには臓器提供の意思を書き込める欄がある。自らの脳死を想像するのは容易なことではないが、その時に誰かを助けたいという気持ちのある人はたくさんいるはずだ。表明をためらってはいられない。