発達障害のある女子高生アーティストが描く夢、作品「ゾウ」はインスタで約500万回再生(2024年4月5日『読売新聞』)

 インスタグラムで自ら描いた絵を発信し、人気を集めている女子高校生のアーティストがいる。埼玉県吉川市に住む高校2年のapipo(あぴぽ)さん(16)だ。発達障害があり学校に行けない時期もあったが、大好きな絵を描いて自信を取り戻し、現在は単位制の高校に通いながら作品づくりを続ける。4月には埼玉県内で個展を開くなど、活躍の幅を広げており、「世界中の皆さんに絵を見てもらいたい」と夢を描く。(読売中高生新聞編集室 浜田喜将)

ウサギの発明家
ウサギの発明家

学校行かず、夢中になったのは絵

 独創的な視点で描かれた動物たちや、オリジナルキャラクターの数々。タッチは異なるが、すべて、あぴぽさんの作品だ。カラーペンやマーカーを 駆使くし した「ペン画」で、色づかいも含め、細かいところまでこだわりが感じられる。

ペンを使って絵を描くあぴぽさん(埼玉県吉川市で)
ペンを使って絵を描くあぴぽさん(埼玉県吉川市で)

 あぴぽさんは幼い頃からお絵描きが大好きだった。オリジナルキャラクターを生み出したり、あえて難易度の高い「一筆書き」でお花を描いたり…。自分なりの“挑戦”をしながら楽しんでいたという。

切り株たちの祭り
切り株たちの祭り

 発達障害がわかったのは、小学3年生の頃。特定の場面で話すことができなくなる「場面 緘黙かんもく 症」と、対人関係を築くのが不得意とされる「自閉スペクトラム症」と診断された。集団行動が苦手で、学校で過ごすことが苦痛になり、腹痛など体の不調も表れた。

 学校に行かなくなり、自宅で過ごす時間が増えたあぴぽさんは、夢中で絵を描いた。母の滝沢由香さん(39)は「いろいろな人に見てもらい、自信を深めてほしい」と考え、作品をインスタグラムに投稿してみることを提案。約6年前から、由香さんが開設するアカウントで発信を始めた。

 すると「天才ですね!」「センスあり過ぎ」など、コメントが次々と寄せられた。多くの人に作品を評価されたことで、あぴぽさんはさらに意欲的に創作に取り組むようになったという。

500万回再生

 最も反響が大きかったのは、中学2年だった2021年に投稿した動画だ。ペンでリアルな「象」を描く様子を映した動画は、インスタグラムで500万回近く再生された。

ゾウ
ゾウ

 投稿を続けるうちに、新たなジャンルの絵に挑戦したり、「この作品を投稿してほしい」と由香さんに願い出たりと、どんどん積極的になっていったというあぴぽさん。投稿へのコメントを見るたび「やったー!」「うれしい」と喜び、表情も豊かになったという。

朝日を見るヒツジ
朝日を見るヒツジ

 インスタグラムのフォロワーは今や1万人以上だ。「画家になりたい」という夢もでき、あぴぽさんは「これからもたくさんの人に見てもらえるよう描き続けていきたい」と語る。

 由香さんは「娘が『大好き』と言えるものに出会えて良かった。娘の活躍が、生きづらいと思っている子どもたちや親の励みになればうれしい」と話している。