「虎に翼」で朝ドラも110作目 61年新聞小説を参考に開始、主題歌は84年「ロマンス」から(2024年4月8日)

<ニッカンスポーツ・コム/芸能番記者コラム>  NHK朝の連続テレビ小説「ブギウギ」が、3月29日放送で終了した。ブギの女王笠置シヅ子さんをモデルにしたヒロインを、趣里(33)が見事に演じた。歌声だけでなく、悲しくても「そやな」と言ってニッコリ笑う福来スズ子の笑顔に、癒やされた視聴者は多かったと思う。

 4月1日から放送が始まる朝ドラの次回作は「虎に翼」。日本初の女性弁護士の1人である三淵嘉子さんをモデルに、伊藤沙莉(29)がヒロイン猪爪寅子(ともこ)を演じる。26年放送の大河ドラマ「豊臣兄弟!」に主演する仲野大賀(31)が書生役で出演するのも注目である。

 朝ドラは1961年(昭36)にスタートした。NHKアーカイブスなどによると、当時、ラジオで聞きながら家事や仕事ができる連続放送劇が人気を集めていた。まだ朝にテレビドラマを見る習慣のない時代。その時間帯を開拓するため、朝刊に毎日掲載される新聞小説を参考に、朝ドラをスタートさせた。

 第1作は「娘と私」。月曜日から金曜日まで1年間、午前8時40分から20分間の放送だった。実は同作品は、58年に放送された人気ラジオドラマのテレビ版だった。

 当初は武者小路実篤氏や林芙美子氏らの小説が原作となることが多かった。第5作「たまゆら」(65年)では、ノーベル賞作家の川端康成氏が初めてドラマ用の原作を手がけ、特別出演もしている。定年退職した主人公(笠智衆氏)の葛藤や家族との関わりを描いた。映画俳優の笠氏のテレビ初出演作でもあった。

 以後、平岩弓枝山田太一石森史郎、花登筐、橋田寿賀子各氏らのオリジナル作品が続々と登場した。

 朝ドラは当初1年間放送の長丁場だったが、出演者はもちろん、脚本家や撮影スタッフもハードな日々が続いた。そのため第15作の「水色の時」(75年)から半年間放送となり、制作に余裕が生まれた。「水色の時」から75年度前期など、前期、後期で表記されるようになった。

 「虎に翼」の主題歌は米津玄師の「さよーならまたいつか!」。朝ドラの主題歌は、中島みゆき桑田佳祐福山雅治MISIA、ドリカム、ミスチルGReeeeNあいみょん、back number、AKB48宇多田ヒカルスピッツ、ゆず、星野源竹内まりやらそうそうたるアーティストが担当している。

 もともと朝ドラには主題歌はなかった。オープニング曲は歌詞のないインストゥルメンタルが多く、歌詞があっても挿入歌という扱いだった。

 朝ドラに主題歌が登場したのは第32作「ロマンス」(84年前期)で、歌手芹洋子と主演の榎木孝明が歌った「夢こそ人生」と言われている。

 朝ドラは「虎に翼」で110作目となるが、47都道府県がすべて舞台になっている。その大トリが埼玉県だった。第80作「つばさ」(09年前期、主演・多部未華子)で、埼玉・川越の和菓子店が舞台となった。

 「ブギウギ」や「虎に翼」は、戦前戦後を生きたヒロインの物語だが、朝ドラの時代設定は現代から江戸時代まで幅広い。もっとも古い時代設定は、第93作「あさが来た」(15年後期)で、1857年(安政4)から物語がスタートした。江戸時代から始まるのは朝ドラ初だった。女性実業家の草分け的存在である広岡浅子氏をモデルに、波瑠が好演した。

 朝ドラは最近、再放送も注目されている。「ブギウギ」と並行して第99作「まんぷく」(18年後期)が再放送されていた。「虎と翼」も並行して、第64作「ちゅらさん」(01年前期)の再放送がPRされている。沖縄を舞台に、医療に生きるヒロイン(国仲涼子)の生きざまを描いた。

 初期の朝ドラには、撮影フィルムなどが残っていない作品もあるというが、あらためていろいろな作品を見たいものだ。

【笹森文彦】

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