自民党内で、国会議員に月額100万円が支給される調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)の改革に踏み出す動きが出ている。旧文通費の使途公開などには慎重だったが、派閥の政治資金パーティー収入不記載事件に伴う批判の高まりを受けて軌道修正を余儀なくされた形だ。ただ、どこまで改革に踏み込むのかは見通せず、野党からは本気度を疑う声が漏れる。
「さまざまな政治資金に関する課題がある。各党間でしっかりと議論していく」。自民の渡海紀三朗政調会長は3日、大阪市内で開かれた党会合でこう強調した。 渡海氏が言及した「課題」には、大阪を金城湯池とする日本維新の会が求めてきた旧文通費改革も含まれる。
岸田文雄首相(自民総裁)は3月27日の参院予算委員会で「党の考え方を整理し、議論に参加したい」と述べた。 与野党は先月2日、旧文通費を含む政治改革を議論する特別委員会を衆院に設置することで合意した。自民は事件をめぐる党内処分を終えた後、党内議論を本格化させる方向だ。
旧文通費をめぐっては、支給を日割りとする改正法が令和4年4月に成立したものの、使途公開や使い残した分の国庫返納といった改革は先送りされた。自民内で「使途を明らかにすれば自由に使えなくなる」などの懸念が根強かったためだ。自民が今年1月に策定した政治改革の中間とりまとめでも旧文通費の見直しは盛り込まれなかった。
ただ、事件などの影響で内閣や自民の支持率低迷が続いており、「せめて旧文通費改革は進めざるを得ない」という機運は高まりつつある。首相も水面下で検討を指示しており、ある党幹部は「公開度は高めざるを得ない。
世間から改革に後ろ向きだと思われてはいけない」とつぶやいた。 とはいえ、自民には旧文通費の抜本的な改革を断行しにくい事情もあるようだ。維新の幹部は変化を歓迎しつつ、「自民の中堅・若手の間では『今の方が使い勝手が良い』といった声が大勢だ。総裁選を控える首相がどこまで改革に踏み込めるのかは不透明だ」と語った。(竹之内秀介)