コロナ公費支援終了 気緩めず基本的対策を(2024年4月3日『秋田魁新報』-「社説」)

 新型コロナウイルスの治療や医療提供に関する公費支援が3月末で終了し、インフルエンザなどと同じ体制に移行した。無料だったワクチン接種が有料となり、入院費への補助がなくなるなど、原則として患者の自己負担となった。

 国の対応の大きな節目だが、新型コロナが収束したわけではない。人の移動が多い時期に感染者が増え、高齢者らが感染すれば重症化することもある。引き続き気を緩めることなく、場に応じたマスクの着用、うがいや手洗いの励行といった基本的な予防対策が求められる。

 新型コロナの医療費は当初、全額公費負担だった。感染症法上の位置付けがインフルエンザと同じ5類に移行した昨年5月から、自己負担を伴う保険診療となった。急激な負担増加を避けるため公費支援は段階的に縮小され、10月からは治療薬代が一部自己負担となっていた。

 今月からのワクチン接種は、市町村が行う定期接種の対象が65歳以上の高齢者と、60~64歳の一定の基礎疾患のある人に限定される。秋から冬にかけて実施し、自己負担が7千円程度となるよう国が助成する。

 それ以外の人は任意接種となり、自費で接種する。費用は医療機関によって異なるが、厚生労働省が2月に定期接種への助成額を決める際、メーカーから聞き取って算出した接種費用は「1万5300円程度」だった。インフルエンザのワクチン接種に比べて高額だ。

 今後、医療逼迫(ひっぱく)を引き起こすようなウイルスがもし出現すれば、厚労省感染症法上の位置付けを指定感染症に戻すこともあるとしている。そのような場合には、再び無料の定期接種の体制に切り替える対応が必要になるのではないか。

 公費支援の終了に伴い治療薬代の自己負担も増える。3月末まで、医療費の窓口負担割合が3割の人は、1回当たり9千円に抑えられていた。ところが、今後は薬価約9万円の飲み薬の場合、3割負担の人は約2万7千円になる見通し。

 国民生活が平時に戻りつつあり、公費支援の終了はやむを得ないだろう。だが自己負担の増加で接種や受診を控えるケースが増えることが懸念され、感染拡大につながりかねない。行政や医療界が適切な受診を呼びかけることが重要だ。

 新型コロナの感染者が国内で初めて確認されてから4年余り。後遺症に関する調査結果が示されるようになっている。症状は倦怠(けんたい)感や長引くせき、味覚障害、嗅覚障害、頭痛など。神奈川県の調査では感染者の45%が後遺症に悩み、このうち2割が仕事や学校を休んだり、辞めたりしていた。

 後遺症については解明されていない部分も多いとされる。国には調査研究を進めると同時に、社会に後遺症への理解を促し、支援の仕組みを整えることも求められる。