有事に防衛拠点とする空港と港、16カ所を選定 つきまとう「標的になる不安」、22カ所は了解せず(2024年4月2日『東京新聞』)

 
 政府は1日、有事の際に自衛隊海上保安庁が使うことを想定する「特定利用空港・港湾」に、北海道や沖縄など7道県の16カ所を選定した。滑走路の延長や岸壁の増築などで、戦闘機や艦船が利用しやすいように整備・改修する。政府は当初、沖縄や鹿児島などの島しょ部を中心に38カ所を候補地としたが、ミサイル攻撃の標的になる不安などから了解が得られず、22カ所で継続協議となった。

◆戦闘機や護衛艦運用へ改修、訓練も

 特定利用空港・港湾について、政府は候補地を非公表としているが、本紙の取材では10道県の38カ所で、関係自治体と協議を進めてきた。
 合意が得られた16空港・港湾は、北海道、香川、高知、福岡、長崎、宮崎、沖縄の7道県に分布。南西地域に部隊を展開したり、燃料や食料などを輸送したりする拠点となる九州、四国が中心で、陸上自衛隊が多く所在する北海道は最多の5カ所が選ばれた。1日の持ち回りの関係閣僚会議で決定した。
 
 国は16施設の管理者である地方自治体や管理組合と、円滑利用に関する枠組みを締結済み。有事を想定し「緊急性が高い場合、施設利用の合理的理由があると認められる」場合に、自衛隊などが利用できるよう努力することを確認した。普段は民間利用されているが、年数回は、自衛隊が訓練に使う見通し。戦闘機や輸送艦護衛艦の利用に合わせた改修費用として、国は24年度の公共事業費から計370億円を充てる。

◆「米軍も使うはず。当然、攻撃目標に」

 候補地が最も多い沖縄県では、国管理の那覇空港石垣市管理の石垣港のみ選定された。玉城デニー知事は1日、県管理が多い残り10カ所について「整備後の運用など不明な点がある」として、協議を続けるとのコメントを公表した。玉城氏は2月の県議会で「抑止力の強化が地域の緊張を高め、不測の事態が生じることを懸念する。沖縄が攻撃目標になることはあってはならない」と訴えていた。
 今回の選定から外れた福井、熊本、鹿児島各県は取材に「国による関係市町への説明不足」などと了解しなかった理由を説明した。
 中京大の佐道明広教授(安全保障論)は取材に「政府は特定利用空港・港湾の米軍利用は想定していないと言うが、日米ガイドラインでも民間の空港や港湾も有事になれば共用するとされており、米軍は当然使うはずだ」と指摘。「攻撃目標となる危険性は高まらないとも説明しているが、住民へのごまかしだ。自衛隊や米軍が利用すれば相手の攻撃対象に当然なる」と強調する。(川田篤志

 特定利用空港・港湾 自衛隊海上保安庁が有事に使う場合に備え、政府が自治体など施設管理者との間で「円滑な利用に関する枠組み」を結んだ民間の空港・港湾の総称。2022年策定の国家安全保障戦略で明記した、防衛力強化を補完する4分野の一つの「公共インフラ整備」の推進策で、目的に「自衛隊・海保による国民保護の対応、平素の訓練、有事の際の利用・配備」を挙げた。政府は関連予算を25年度以降も措置し、選定施設も増やしたい考えだ。