◆戦闘機や護衛艦運用へ改修、訓練も
特定利用空港・港湾について、政府は候補地を非公表としているが、本紙の取材では10道県の38カ所で、関係自治体と協議を進めてきた。
合意が得られた16空港・港湾は、北海道、香川、高知、福岡、長崎、宮崎、沖縄の7道県に分布。南西地域に部隊を展開したり、燃料や食料などを輸送したりする拠点となる九州、四国が中心で、陸上自衛隊が多く所在する北海道は最多の5カ所が選ばれた。1日の持ち回りの関係閣僚会議で決定した。
国は16施設の管理者である地方自治体や管理組合と、円滑利用に関する枠組みを締結済み。有事を想定し「緊急性が高い場合、施設利用の合理的理由があると認められる」場合に、自衛隊などが利用できるよう努力することを確認した。普段は民間利用されているが、年数回は、自衛隊が訓練に使う見通し。戦闘機や輸送艦、護衛艦の利用に合わせた改修費用として、国は24年度の公共事業費から計370億円を充てる。
◆「米軍も使うはず。当然、攻撃目標に」
候補地が最も多い沖縄県では、国管理の那覇空港と石垣市管理の石垣港のみ選定された。玉城デニー知事は1日、県管理が多い残り10カ所について「整備後の運用など不明な点がある」として、協議を続けるとのコメントを公表した。玉城氏は2月の県議会で「抑止力の強化が地域の緊張を高め、不測の事態が生じることを懸念する。沖縄が攻撃目標になることはあってはならない」と訴えていた。
今回の選定から外れた福井、熊本、鹿児島各県は取材に「国による関係市町への説明不足」などと了解しなかった理由を説明した。
中京大の佐道明広教授(安全保障論)は取材に「政府は特定利用空港・港湾の米軍利用は想定していないと言うが、日米ガイドラインでも民間の空港や港湾も有事になれば共用するとされており、米軍は当然使うはずだ」と指摘。「攻撃目標となる危険性は高まらないとも説明しているが、住民へのごまかしだ。自衛隊や米軍が利用すれば相手の攻撃対象に当然なる」と強調する。(川田篤志)