「厳しく言うと辞めてしまう…」新入社員のマナー指導、カギは?(2024年4月1日『毎日新聞』)

  • 写真はイメージ=ゲッティ
写真はイメージ=ゲッティ

 新入社員への指導を難しいと感じる人は半数超――。人材育成会社、リクルートマネジメントソリューションズ(MS)が実施した社会人のマナーに関する調査でこんな実態が明らかになった。新入社員を迎える時期だが、世代ギャップのある若い世代への対応に苦慮する人が多いようだ。

 ただコミュニケーションが重要との認識は若手も共通で持っており、対話を深めることが指導のカギになるかもしれない。

 新入社員に「ビジネスマナーに対するイメージ」を尋ねたところ「堅苦しい・古い」が26%で最多。次いで「複雑・難しい」(18・4%)、「面倒くさい」(13・5%)と続き、ビジネスマナーに対し、マイナスイメージを持っていることがうかがえる。

 面倒だが「これだけは身につけたいマナー」を新入社員に聞くと、上位は「あいさつ」(18・8%)▽「言葉遣い」(18・2%)▽「宴席・食事の振る舞い」(13・8%)――といったコミュニケーションに関連する項目が続いた。

 先輩・上司が「新入社員に直してほしいマナー」として多いのは、身につけたいマナーと同様、「言葉遣い・コミュニケーション能力」(30・7%)や「あいさつ」(17・3%)などコミュニケーションが上位を占めた。その一方、「電話対応」などビジネススキルを問うものは少なかった。

 では、いざ新入社員に指導が必要な場面で、先輩・上司はどのような対応をしているのか。「当たり障りない言葉で伝えた」(49・6%)や「見て見ぬふりをした」(16・3%)で、計約7割が消極的な対応をしていた。

 その結果を裏付けるように、「新入社員の指導に難しさを感じている」との回答も多い。理由として「厳しく言うと辞めてしまう」▽「パワハラにならない範囲がわからない」▽「ぎくしゃくした関係性になりたくない」といった声が上がった。積極的な指導を難しくしている背景には、世代間ギャップのほか、社会的なハラスメント意識の高まりがあるようだ。

 では先輩や上司が「マナーが必然と考えるに至った要因」は何だろうか。マナーに関する経験談を聞くと、マナーを重んじることで、「自身の評価」や「仕事のやりやすさ」に影響したとの好意的な回答があり、マナーを実践する利点を感じていることがわかる。

 リクルートMSは、新入社員がビジネスマナーをネガティブにとらえていることについて、「マナーの必要性がまだ実感できていないだけ」と分析。「マナー実践の利点などを新入社員に伝えていくことで、マナーを身につける価値を感じられる」と助言している。

 調査は「新人」が社会人1~2年目、「先輩・上司」が社会人3年目以上の人が対象。2023年12月にインターネットで調査し、計684人の回答をまとめた。【嶋田夕子】