子どもの成長に必要な経済基盤を保障する仕組みが欠かせない。
共同親権の導入をはじめ、離婚後の親子のあり方に関する民法などの改正案が、国会で審議入りした。別居した親が支払う子どもの養育費についても、不払い対策が盛り込まれた。
2021年度に国が実施した調査では、母子家庭のうち、養育費を受け取っているのは28・1%に過ぎない。そもそも支払いの取り決めがない世帯が、半数以上に上っていた。
母子家庭が大半を占めるひとり親家庭の貧困率は44・5%で、先進国の中でも高い。不払いが苦しい家計の一因になっている。
法案では、「法定養育費」を創設する。父母の間で養育費の支払いが決まらない場合、別居親に対し、法務省令に基づいた金額の支払いを請求できる。
養育費の不払いがあれば、債権として優先的に回収できることも民法に明記する。
不払いが社会問題化し、政府は対策を検討してきた。養育費を受け取る母子家庭の割合を、31年に40%とする目標を掲げている。
新たな制度ができれば、一歩前進だ。だが、課題は残る。
法定養育費は、父母間の取り決めができるまでのセーフティーネットという位置づけだ。子どもの最低限度の生活を維持するために必要な金額でしかない。
支払いの請求や給料の差し押さえなどには、法的な手続きが必要になる。仕事や子育てに追われるひとり親にとって負担は重い。
離婚しても、両親には子どもの生活を保障する責任がある。それは親権の有無に関わらない。
離婚届を受け付ける自治体や、専門家らが父母の話し合いを促していくことが大切だ。
ただ、離婚時は感情がもつれているケースが多い。夫婦間暴力があれば、話し合いはできない。
公的な関与を強める検討も続けるべきだ。欧米では国や行政が養育費を立て替えたり、強制的に徴収したりする制度を設けている。
子どもの利益につながる仕組みを設けるため、国会で議論を深める必要がある。
全ての子どもが幸せに生きられる社会の実現に向け、取り組みを進めなければならない。