学校はなくなっても…(2024年3月31日『佐賀新聞』-「有明抄」)

 春、出会いと別れの季節。親しい人との別れもつらいが、思い出の場所との別れも寂しさが募る。今月は特に、「閉校」のニュースが続いた。白石町では

学校はなくなっても…
2024/03/31 05:15

中島義彦

 春、出会いと別れの季節。親しい人との別れもつらいが、思い出の場所との別れも寂しさが募る。今月は特に、「閉校」のニュースが続いた。白石町では福富、有明、白石の3中学校が、唐津市厳木町では厳木小と箞木(うつぼぎ)小が、肥前町では納所、田野、入野の3小学校が統合される。いずれも、きょうがそれぞれの歴史の最終ページだ

◆入野小は、ベストセラーとなった『にあんちゃん』の作者安本末子さんの出身校。炭鉱で町がにぎわった頃は多くの児童が通っただろう。入野小に限ったことではないが、変化が激しい時代の波は時に地方に冷たく、厳しい。難題だが、少子化や過疎化に歯止めをかけるため、自治体には若者を引きつける施策が求められる

 

◆寒の戻りで遅れていた桜の開花宣言が県内にも出た。華やかな桜景色を見るといつも、大好きな曲が思い浮かぶ。森山直太朗さんの「さくら」である。♪〈さくらさくらいざ舞い上がれ永遠にさんざめく光を浴びて/さらば友よまたこの場所で会おうさくら舞い散る道の上で〉

◆「学びや」への愛着は誰にでもあると思う。学校はなくなっても、そこで生まれた友との絆、思い出までは誰にも奪えない

◆生まれ育った土地を離れた若者もいつか戻り、ふるさとが抱える難題の解決に力を貸してほしい。そんなことを願う年度最後の日である。(義)