白票は無意味 「まだましかな」に1票を(2024年3月31日『毎日新聞』)

松尾貴史さん作

 歴代の首相が「解散するか」と問われると、その都度「考えていない」と答えることが多い気がする。もちろん、そのままの意味で受け取る人は少数派ではないだろうか。「解散しない」と言ってしまったら、駆け引き、けん制のカードを失うことになりかねないから、そうは言わないのかもしれない。「しない」と言ってその後解散してしまったら、うそつき呼ばわりされてしまいかねない。だから「考えていない」と言うのだろう。「考えていなかったけど、その後考えた」とはいくらでも言える。

 「善処する」「前向きに検討したい」「精査して適正に処理する」など、「やらない」という意味の政治家用語は多いが、この「考えていない」ほど空虚な言葉も他にないのではないだろうか。政治家があらゆる打てる手を想定しなくてどうするのか。そんなシミュレーションをしていないわけがないではないか。